組み込みエンジニアとは?仕事・年収・「やめとけ」の理由や未経験からの転職を解説
2026年10月21日更新
組み込みエンジニアへの転職を考えるなかで、「自分の経験で通用するのか」「やめとけという声は本当なのか」と迷っていませんか。
組み込みエンジニアとは、製品に組み込まれ、機器を動かすソフトウェアを開発する技術者です。何を作り、どんなスキルが求められ、どんな働き方になるのかを知れば、自分が進むべきキャリアかどうかも見えてきます。
この記事では、以下の内容を解説します。
- 組み込みエンジニアの仕事内容と、開発の流れ5ステップ
- 組み込み開発ならではの4つの制約と、求められる5つのスキル
- 公的データで見る年収と働き方の実態
- 「やめとけ」「オワコン」と言われる5つの理由
- 未経験から転職する4ステップ
組み込みエンジニアへの転職を検討している方に、応募するかどうかを判断するための材料を整理しているので、ぜひ参考にしてください。
組み込みエンジニアの転職

著者
串田 聡太
(Kushida Sota)
明治大学卒業後、富士通株式会社にて、自社製品に加えSAPやSalesforce導入、DX提案などを経験。その後、パーソルキャリア株式会社にて、ITエンジニアの転職支援を担当。業界トップクラスの実績を有する。
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監修者
伊東 光雄
(Ito Mitsuo)
専門学校卒業後、約12 年間IT サービス事業会社にてシステム開発、インフラ運用管理、自社製品の新規開拓営業に従事。その後、2014 年に株式会社ワークポートに就業しキャリアアドバイザーとして転職相談にお越し頂く求職者に対し、キャリアに関する相談業務~求人企業のご紹介~内定・入社までのサポート及び、入社後のアフターフォロー業務全般に従事。
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目次
CONTENTS
組み込みエンジニアとは?機器に組み込まれる制御ソフトウェアを開発する職種
組み込みエンジニアとは、自動車や家電、産業機器、医療機器などの製品に組み込まれ、その機器を動かすソフトウェアを開発する技術者です。エアコンが室温を一定に保つのも、産業用ロボットが決められた動きを正確に繰り返すのも、製品の内部にある小型のコンピュータが制御しているからです。組み込みエンジニアは、そのコンピュータで動くプログラムを設計し、作り、実機で確かめるところまでを担当します。
パソコンやスマートフォン向けの開発と違うのは、動かす相手のハードウェアが先に決まっている点です。使えるメモリや処理性能には上限があるため、その範囲内で動くようにプログラムを組みます。
この章では、次の3点を整理します。
- 組み込みエンジニアが開発する「組み込みシステム」とは
- 同じ「組み込みエンジニア」でも会社によって呼び名も担当範囲も違う
- 組み込みエンジニアと混同されやすい5職種との違い
求人票に並ぶこの職種名が、どこまでの仕事を指しているのかも、あわせて見分けやすくなるでしょう。
組み込みエンジニアが開発する「組み込みシステム」とは
組み込みシステムとは、特定の機能を実行するために機器の内部へ組み込まれたコンピュータシステムです。ハードウェアとソフトウェアをセットで設計し、その製品がやるべきことだけをこなせるように作り込みます。
組み込みシステムは、次の要素で成り立っています。
- マイコン(※)と呼ばれる小型のコンピュータが中心になる
- センサーから受け取った値をもとに機器を動かす
- 誤差やノイズを含むセンサーの値を補正する
- 処理の時間を守るためにリアルタイムOSを載せることがある
- 使えるメモリの量を見ながらプログラムを組む
パソコンのように、あとからアプリを入れて用途を増やす作りにはしません。やることが決まっているぶん、載せる部品も処理の流れも製品ごとに設計し直します。同じ組み込みシステムという言葉でも、小型の家電と車載機器では開発の規模が大きく変わります。
(※)マイコン:マイクロコントローラの略。機器の動作を制御するために組み込まれる小型のコンピュータ
同じ「組み込みエンジニア」でも会社によって呼び名も担当範囲も違う
組み込みエンジニアの募集に使われる呼び名は、会社によって変わります。組込系ソフトウェア開発技術者、制御系ソフトウェア開発技術者、ファームウェア開発技術者は、いずれも同じ職業の別名です。求人を探すときは、これらの名前でも検索してみましょう。
担当する範囲も、会社ごとに幅があります。組み込みの開発は、大きく次の3つに分かれます。
| 開発の範囲 | 主に扱うもの | 求められる経験 |
|---|---|---|
| ソフトウェアのみ | マイコン上で動くプログラム | C言語とマイコンの制御 |
| ハードウェアまで | 部品の構成と基板 | 電子回路と部品の選定 |
| システム全体 | 機器とサーバーの連携 | 要件定義とサーバー側の開発 |
職種名だけでは、この3つのどれを任されるかまでは読み取れません。求人票を見るときは、求める経験としてC言語とマイコンの制御が挙がっているか、回路図の読解まで求められているかを確かめましょう。そこまで見ると、入社後に担当する工程の見当がつきます。
組み込みエンジニアと混同されやすい5職種との違い
混同されやすい5職種との違いは、何を作るかで分かれます。組み込みエンジニアが担当するのは、機器の中で動くプログラムの開発です。それぞれの職種が何を開発するのかを、次の表にまとめました。
| 職種 | 職種が開発するもの | 組み込みエンジニアが開発するもの |
|---|---|---|
| 制御系エンジニア | 機器をどう動かすかの制御の設計 | 設計された制御を動かすプログラム |
| IoTエンジニア | ネットにつながる機器とサーバー | 機器側とサーバー側のプログラム |
| システムエンジニア | 顧客の業務に合わせたシステム | 載せる機器が決まったソフトウェア |
| 電子機器技術者(回路設計) | 電子回路と基板 | 回路の上で動くプログラム |
| Webエンジニア・アプリ開発者 | パソコンやスマートフォンで動くソフト | 特定の機器の中だけで動くソフト |
システムエンジニアとの違いは、動かす機器が決まっているかどうかです。顧客の業務に合わせてシステムを組み立てるシステムエンジニアに対し、組み込みエンジニアが開発するのは、載せる機器が先に決まっているソフトウェアです。
制御系エンジニアとの分かれ方は、会社によって変わります。機械の動かし方を理論から設計する担当と、その設計をマイコンの上で動くプログラムにする担当を分けている会社がある一方で、1人が両方を受け持つ会社もあります。求人票の業務内容を読んで、どちらを任されるのかを確かめましょう。
求人票だけではわからないことも!
組み込みエンジニアの仕事内容と開発の流れ5ステップ
組み込みエンジニアの仕事は、製品に載せるソフトウェアを設計し、実際の機器で動かして確かめ、発売後の修正まで担当することです。工程の並び自体は、ほかのソフトウェア開発と大きく変わりません。
差が出るのは、ハードウェアの開発と並行して進む点でしょう。使う部品や基板が固まっていくのに合わせて、ソフトウェアの設計も進めます。
組み込みの開発は、次の5ステップに分かれます。
- 要件定義
- ハードとソフトの役割を決める設計
- 実装(C/C++によるプログラミング)
- テスト・実機での動作検証
- 量産対応・運用保守
以下、それぞれのステップで何を決めるのかを見ていきましょう。
要件定義
要件定義では、製品に持たせる機能と性能を決めます。顧客や製品の企画担当者から要望を聞き取り、何をどこまで実現するのかを仕様書の形にまとめる工程です。
このとき同時に、ハードウェアの制約と突き合わせます。使う予定のマイコンで処理が間に合うのか、必要な機能がメモリに収まるのかを見積もり、収まらなければ機能の優先順位を見直します。ソフトウェアだけで判断を完結させられないところが、要件定義の難しさです。
ここで機能を詰め切れないと、あとから基板の設計をやり直すことになり、開発費と期間がふくらみます。そのため、どの機能を載せてどれを見送るかは、この段階で関係者とすり合わせておきましょう。
ハードとソフトの役割を決める設計
この工程で決めるのは、製品の機能をハードウェアとソフトウェアのどちらで実現するかです。たとえばノイズを取り除く処理は、回路側に部品を足しても、ソフトウェア側で数値を補正しても実現できます。どちらに寄せるかで、部品代もプログラムの量も変わります。
役割を分けたあとは、ソフトウェア側の中身を固めていきます。搭載するマイコンを選び、リアルタイムOSを使うかどうかを決め、処理の優先順位や全体の構成を設計します。
この段階の判断は、あとから覆しにくいものばかりです。部品の選定が終わると基板の製造に進むため、ソフトウェア側の都合で部品を変えるには手戻りが生じます。回路図を読みながら設計できると、この工程で意見を出せるようになるでしょう。
実装(C/C++によるプログラミング)
実装では、設計した動作をマイコンの上で動くプログラムとして書きます。使う言語はC言語が中心で、規模の大きい製品ではC++も使われます。この2つが選ばれるのは、ハードウェアを直接操作でき、メモリの使い方を細かく指定できるからです。
書く対象は、センサーやモーターといった部品を動かすためのプログラムです。マイコンの特定の番地に値を書き込んでモーターを回す、といった処理を組み立てていきます。部品の仕様書を読みながらコードを書く場面が多いところが、アプリケーション開発との違いでしょう。
処理が遅ければ機器の反応が鈍くなり、メモリを使いすぎれば動作が止まります。設計どおりに書けているかだけでなく、決められた性能の中に収まっているかも見ながら進めます。
テスト・実機での動作検証
テストでは、書いたプログラムを実際の機器に書き込んで動かし、設計どおりに動くかを確かめます。パソコンの上だけで完結しない点が、この工程の特徴です。単体テストから結合テスト、機器全体を通した試験へと、確認する範囲を広げていきます。
動作を調べる道具も、ソフトウェア開発とは変わります。画面に出力して確認するかわりに、デバッガで処理の流れを追い、オシロスコープやロジックアナライザで信号の波形を見ます。プログラムの問題か、部品や配線の問題かを切り分ける作業が、ここでは欠かせません。
機能が動いたあとも、試験は続きます。温度や湿度を変えた環境で動かす、長時間連続で動かすといった条件を変えた試験を重ね、使われる場面を想定して不具合を洗い出します。
量産対応・運用保守
量産対応では、工場で作る製品にどうやってソフトウェアを書き込むかを決めます。試作の段階なら開発用の機材を1台ずつつないで書き込めますが、量産ではその手順を生産ラインに組み込みます。流れてくる基板へ自動で書き込む装置を用意し、作業の手順を固めるところまでが担当範囲です。
発売後は、不具合の修正と機能の追加を担当します。ネットにつながる機器なら、通信を使って出荷後にソフトウェアを更新する手段も選べます。更新の仕組みを入れるかどうかは、設計の段階で決めておきましょう。
保守では、すでに多くの製品が各地で動いていることが前提になります。1件の不具合が出荷済みのどの製品にまで及ぶのかを調べたうえで対応を決めるので、信頼性を保つ責任は発売後も続くでしょう。
現場に詳しいアドバイザーが対応
組み込みエンジニアが活躍する主な4つの分野
組み込みエンジニアは、どの分野に進むかで、扱う製品も求められる品質の水準も変わります。人の命に関わる製品を扱う分野では、不具合が起きない作りにするための手間が、ほかの分野より多くかかります。
組み込みエンジニアが多く活躍しているのは、次の4つの分野です。
| 分野 | 主な製品 |
|---|---|
| 自動車・車載システム | エンジンやモーターの制御、運転支援 |
| 家電・住宅設備 | テレビ、洗濯機、炊飯器 |
| 産業機器・FA・産業用ロボット | 工作機械、生産ラインの制御装置 |
| IoT機器・医療機器 | ネットにつながる家電、レントゲンやMRI |
このほかにも、プリンタなどのOA機器、自動販売機や自動改札機、航空機にも組み込みシステムが使われています。組み込みエンジニアが関われる製品の幅は、ここに挙げたものにとどまりません。
以下、分野ごとに何を作り、どんな条件が求められるのかを見ていきます。
自動車・車載システム
自動車では、エンジンやモーターの制御、ブレーキ、運転支援の機能を、電子制御ユニットと呼ばれる小型のコンピュータが動かしています。組み込みエンジニアは、このユニットの中で動くプログラムを開発します。1台の車に何十個もの電子制御ユニットが載っているため、ユニット同士で情報をやり取りする通信の設計も担当します。
いま各社が力を入れているのが、販売したあとにソフトウェアを更新して機能を増やす作りへの切り替えです。国もこの流れを産業政策に位置づけ、ソフトウェア人材の育成と確保を課題に挙げています。
開発の進め方も、安全性の確認に時間をかける形で組み立てられています。
家電・住宅設備
家電や住宅設備では、テレビや洗濯機、炊飯器、エアコンといった製品の中で動くプログラムを開発します。身近な製品が多いので、自分が書いたプログラムが店頭に並ぶところまで見届けられる分野です。
この分野で効いてくるのが、1台あたりの部品代を抑える作りです。何万台も作る製品では、使うマイコンを1つ小さいものに替えるだけで、製造の費用が大きく変わります。限られた性能の中に必要な機能を収めることが、設計の中心になります。
もうひとつの特徴は、誤った操作をされても止まらないようにする作りです。ボタンを同時に押す、連打する、動作の途中で別の指示を出すといった使われ方を想定し、どの場合でも安全な動きになるようプログラムを組み立てます。
産業機器・FA・産業用ロボット
工場で使う機器では、生産ラインの制御装置や産業用ロボット、工作機械、検査装置の中で動くプログラムを開発します。工場の設備だけでなく、通信の基地局や電力、交通のインフラを動かす機器も、この分野に含まれます。
この分野で求められるのは、止まらずに動き続ける作りです。生産ラインが止まれば、大きな損失につながります。不具合が出ない状態を保つことが優先されます。
設備を動かす現場では、PLCと呼ばれる専用の装置で制御する方法も使われています。マイコンを使った開発とは技術の系統が違うので、求人票を読むときは、どちらを扱う仕事なのかを確かめましょう。
IoT機器・医療機器
ネットにつながる機器では、機器の中で動くプログラムに加えて、集めたデータをサーバーへ送る処理や、サーバー側の開発まで担当することがあります。農業用ハウスの温度や湿度を測って窓の開閉を自動でおこなう装置のように、産業の現場に入っていく機器も増えています。
医療機器では、レントゲンやMRIといった検査装置の中で動くプログラムを開発します。測定した値を画像にする処理や、装置を安全に動かす制御を担当する仕事です。動作の不具合が人の体に影響するため、品質への要求はより厳しくなります。
ネットにつながる分、守るべきものも増えます。通信を暗号化する、不正なアクセスを防ぐといった作りが求められるので、セキュリティの知識が、組み込みエンジニアの仕事に含まれるようになってきました。
分野ごとの開発環境もお伝えします
組み込み開発ならではの4つの制約
組み込み開発には、パソコンやスマートフォン向けの開発にはない制約が4つあります。この制約が、設計の進め方や、不具合を直すときの手順を変えています。
- 特定のハードウェア上でしか動かない
- メモリ・処理性能・消費電力の制約がある
- リリース後に直せない前提で品質を作る
- 実機がなければデバッグが進まない
以下、それぞれの制約が実際の開発でどう影響してくるのかを見ていきます。
特定のハードウェア上でしか動かない
組み込みのプログラムは、書き込む相手のマイコンが変わると動きません。マイコンごとに内部の構造も、周辺の回路を操作する手順も違うためです。パソコン向けのソフトウェアが、機種を問わず同じように動くのとは前提が変わります。
そのため、担当する製品に載るマイコンの構造を理解したうえで開発します。メモリがどう配置されているか、センサーやモーターとどの規格でやり取りするかを把握していないと、部品を動かすプログラムが書けません。ソフトウェアの知識だけでは足りないところが、この制約のきつさでしょう。
ハードウェアの担当者と話す場面が増えるのも、ここから来ています。使うマイコンの性能やメモリの容量、通信の方式は、ソフトウェア側の作りやすさを左右します。選定の段階で意見を出せると、あとの開発が進めやすくなります。
メモリ・処理性能・消費電力の制約がある
組み込みの機器に載るコンピュータは、機器を動かすのに必要な最小限の性能しか持っていません。製品の価格を抑えるために、処理能力も記憶容量も必要な分だけに絞るからです。何万台も作る製品では、部品を1つ小さいものに替えるだけで製造にかかる費用が変わります。
この条件の中で、決められた時間内に処理を終わらせます。メモリを使いすぎれば動作が止まり、処理が間に合わなければ機器の反応が遅れるので、書いたプログラムが性能の枠に収まっているかを測りながら進めます。あとから計算機の性能を足して解決する、という手が使えません。
電池で動く機器では、消費電力も設計の条件に入ります。処理の書き方ひとつで電池の持ちが変わるため、動かす速さだけでなく電力の使い方まで見ながら作ることになるでしょう。
リリース後に直せない前提で品質を作る
組み込みの機器は、出荷したあとにプログラムを直せないものが多くあります。利用者の手元で書き換える仕組みを持たない製品では、不具合が見つかっても配信して修正するという手が使えません。アプリケーションのように、週次で更新を重ねながら仕上げていく進め方とは前提が変わります。
直せないので、出す前に作り込みます。想定していない操作をされても止まらないか、長時間動かし続けても問題が出ないかを、条件を変えながら試験で確かめる工程に時間をかけます。設計の段階で見落としたものは、製品が世に出たあとに残り続けます。
市場に出てから不具合が見つかると、製品を回収する事態にもなりかねません。だからこそ、仕様を決める段階から品質を考えて進めます。
参考:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)システムエンジニア(組込み、IoT)」
実機がなければデバッグが進まない
不具合を調べるには、実際の機器にプログラムを書き込んで動かします。パソコンの画面に状態を出力しながら追いかける方法が使えないので、デバッガで処理の流れを止めて中身を見たり、オシロスコープで信号の波形を確かめたりします。
やっかいなのは、原因がプログラムにあるとは限らない点です。部品の初期不良や配線の不具合でも、同じように機器は動きません。ソフトウェアとハードウェアのどちらに原因があるかを切り分けるところから始めるため、一般的なソフトウェア開発よりデバッグは難しくなります。
機器が手元にないと作業が止まるので、実機を触れる場所で働くことになります。在宅勤務との相性がよくないのは、この制約から来ています。
アドバイザーが実情を解説
組み込みエンジニアに求められる5つのスキル
組み込みエンジニアに求められるのは、ソフトウェアとハードウェアの両方にまたがる知識です。プログラムを書く力だけでは、機器を動かすところまで届きません。採用の場面で確かめられるのは、次の5つです。
- C/C++を中心とした低レイヤー言語
- RTOS・組み込みLinuxなどのOS知識
- マイコン・電子回路・回路図の基礎知識
- 通信技術(UART/I2C/SPI、CAN、BLE)の理解
- 状態遷移設計と実機デバッグのスキル
このうち、転職の時点でどこまで求められるかは、担当する範囲によって変わります。以下、それぞれのスキルが何に使われ、どの水準から求められるのかを見ていきます。
C/C++を中心とした低レイヤー言語
組み込み開発で使う言語は、C言語が中心です。業界団体が会員企業に聞いた調査では、入社時点で必要なスキルとしてC言語を挙げた企業が56%にのぼり、C++やJavaの約2倍となっています。規模の大きい製品や、部品ごとに機能を分けて設計する場面ではC++も使われます。
C言語が選ばれるのは、メモリをどう使うかを自分で指定でき、ハードウェアを直接操作できるからです。限られた性能の中に処理を収めるには、この書き方が要ります。部品を動かすときに細かい制御が必要な場面では、アセンブリ言語を使うこともあります。
同じC言語でも、求められる深さは担当する範囲で変わります。マイコンの上で直接動かすプログラムでは、使えるメモリが数十キロバイトということもあり、1バイト単位で使い方を意識して書きます。一方、組み込みLinuxの上で作るプログラムなら、メモリの割り当てはOSが担うので、そこまでの意識は求められません。
参考:一般社団法人 組込みシステム技術協会(JASA)「新入社員に求める組込み技術知識と人物像調査報告書」

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RTOS・組み込みLinuxなどのOS知識
組み込み機器では、リアルタイムOSと組み込みLinuxがよく使われます。どちらを扱うかで、身につける知識の中身が変わります。
リアルタイムOSを使う機器では、処理の順番を自分で設計します。センサーの値を読む処理、モーターを動かす処理、画面を更新する処理が同時に発生したとき、どれを先に動かすかをあらかじめ決めておきます。処理に順番をつける根拠を説明できることが、この環境では求められます。
組み込みLinuxを扱う機器では、通信やファイルの扱いといった機能がそろっているぶん、そこを自分で作る場面は減ります。一方で、必要なメモリやストレージの量が大きくなるため、機能を取捨選択してサイズを抑える知識が求められます。
マイコン・電子回路・回路図の基礎知識
組み込みエンジニアには、ソフトウェアに加えてハードウェアの知識が求められます。マイコンの内部がどうなっているか、周辺の部品とどうつながっているかを把握していないと、部品を動かすプログラムが書けないためです。
なかでも基本とされるのが、回路図を読む力です。マイコンのピンがどの部品につながっているかを回路図で確かめながら、制御するプログラムを書いていきます。設計書がそろっていない現場では、回路図から仕様を読み取って開発を進めることもあります。
回路図のすべてを覚える必要はありません。電源やスイッチといった代表的な記号から押さえ、実際の回路図を読む回数を重ねるうちに慣れていくものです。
通信技術(UART/I2C/SPI、CAN、BLE)の理解
機器の中の部品どうし、あるいは機器と外部をつなぐ通信の知識が求められます。センサーから値を受け取る、別の基板へ指示を送るといった処理は、どれも決められた通信の規格に沿って書くためです。
規格は、使う場所によって分かれます。機器の内部ではUARTやI2C、SPIが使われ、車載の開発ではCANを扱います。機器の外部とつなぐ場面では、無線の規格も使われます。担当する製品がどの規格を使うかで、必要になる知識が変わります。
ネットにつながる機器が増えたことで、この領域の知識を持つ人の評価は上がっています。無線通信を伴う開発の経験がある人は、業界を問わず求められている状況です。
状態遷移設計と実機デバッグのスキル
組み込みの機器は、利用者の操作やセンサーの信号を受け取って、ランプを点ける、モーターを回すといった動きをします。同じ操作でも、そのときの状態によって動きは変わります。状態遷移設計とは、機器がとりうる状態と、起こりうる事象をすべて洗い出し、その組み合わせごとに何をするかを決めていく設計です。
この整理には、状態遷移表が使われます。状態と事象を縦横に並べた表にすると、動きを決めていないセルが空欄として残るので、考慮の漏れがその場で見つかります。表の書き方を知っていると、ハードウェアやテストの担当者とも仕様を突き合わせられるでしょう。
実機のデバッグでは、設計どおりに動かない原因を探ります。プログラムの書き方に問題があるのか、部品の側に問題があるのかで、手の打ち方が変わります。どちらの可能性も頭に置きながら調べる進め方が、この環境では求められます。
いまのスキルでどこまで通用する?
組み込みエンジニアへの転職で評価される資格
組み込みエンジニアになるために、必須の資格はありません。採用では、どの製品のどの工程を担当してきたかという経験が見られます。
それでも資格を取る意味は2つあります。実務経験のない分野について学習の裏づけを示せることと、自分の理解がどこまで届いているかを測れることです。
転職で評価される資格は、次の4つに分けて紹介します。
- 基本情報技術者試験・応用情報技術者試験
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)
- ETEC(組込み技術者試験制度)
- その他、組み込み分野で評価される資格
以下、それぞれの資格で何を証明できるのかを見ていきます。
基本情報技術者試験・応用情報技術者試験
基本情報技術者試験と応用情報技術者試験は、ITの知識を幅広く問う国家試験です。組み込みに特化した内容ではありませんが、開発の仕事に共通する基礎を身につけていることを示せます。
組み込みで使う知識も、出題範囲に含まれています。プロセッサの割込みや命令の仕組み、メモリの種類と記憶階層、デバイスドライバやアナログとデジタルの変換、電気・電子回路や論理設計まで、小分類として並んでいます。C言語やアセンブラ言語、センサーとアクチュエーターの動作特性も範囲に入っており、組み込みの入り口になる内容がそろっています。
2つの関係は、基本情報技術者試験が入門にあたり、応用情報技術者試験がその上に位置づけられています。応用情報技術者試験に合格すると、組み込みに特化した試験を含むスペシャリスト資格への道が開けます。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)
エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、組み込みシステムの開発に特化した国家試験です。情報処理技術者試験のなかでは最上位のレベル4にあたり、組み込みの専門家として位置づけられる試験区分です。
この試験が想定しているのは、ハードウェアとソフトウェアの要求仕様を決めるところから、設計、構築、製造までを主導する人です。市場や業界の動向を踏まえて製品の戦略を立てる役割も含まれており、求められる機能や性能、品質、セキュリティを、ハードとソフトへ適切に振り分けて実現する力が問われます。
取得すると、個別の実装にとどまらず、製品全体を見渡して組み込みシステムを組み立てられることを示せます。ただし現行の試験制度は2026年度の実施をもって終了し、2027年度から新しい制度に移る予定です。受験を考える場合は、実施の時期を公式サイトで確かめておきましょう。
参考:情報処理推進機構(IPA)「エンベデッドシステムスペシャリスト試験」
ETEC(組込み技術者試験制度)
ETECは、業界団体である組込みシステム技術協会が実施している、組み込み技術者向けの試験です。合格か不合格かを判定するのではなく、スコアとグレードで知識の量を示す形式なので、受けた時点の自分の位置がわかります。
試験は2つに分かれています。クラス2は組み込みの入門にあたる技術者が対象で、未経験の人から経験を積んだ人まで幅広く受験します。クラス1は開発を牽引する中級技術者が対象で、要求や設計、テストの工程を通した総合力や、現場をまとめる立場で必要になる知識が問われます。
クラス1を受けられるのは、クラス2で500点以上を取った人に限られます。まずはクラス2を受けて、どの分野の知識が足りないかを把握するところから始めるのが現実的でしょう。
参考:一般社団法人 組込みシステム技術協会(JASA)「ETEC 組込み技術者試験制度」
その他、組み込み分野で評価される資格
ここまでの3つのほかにも、担当する領域によって評価される資格があります。自分が進みたい方向に合うものを選びましょう。
| 資格 | どんな資格か | 証明できること |
|---|---|---|
| OCRES | 国際的な標準化団体が運営する国際資格 | リアルタイム処理と組み込みの標準技術の知識 |
| JSTQB認定テスト技術者資格 | 国際組織の日本の加盟組織が運営する民間資格 | ソフトウェアテストの知識と進め方 |
| LinuC | 日本市場に合わせて作られたLinuxの認定資格 | Linuxの基本操作とシステム管理の技術 |
| LPIC | 世界180か国以上で通用するLinuxの国際資格 | Linuxの基本操作とシステム管理の技術 |
| 情報処理安全確保支援士 | 登録した人だけが名乗れるセキュリティの国家資格 | サイバーセキュリティの最新の知識と技能 |
OCRESは、オブジェクト指向とUMLに重点を置いた内容で、車載や航空宇宙、医療機器のように高い信頼性が求められる分野に関わる人に向いています。JSTQBは国際的なテスト技術者認定組織の加盟組織が運営しており、取得した資格は海外でも通用します。
LinuCとLPICは、どちらもLinuxの技術者認定で、出題の範囲は似ています。情報処理安全確保支援士は、試験に合格したあと登録してはじめて名乗れる資格で、登録を続けるには講習の受講が必要です。

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組み込みエンジニアで活かせる5つの経験
組み込みエンジニアの中途採用では、どのような開発をしてきたかが見られます。学んだ分野や持っている資格より、担当した製品と工程のほうが判断の材料になります。
とはいえ、組み込みの経験がないまま応募する場合、自分の経歴のどこが評価されるのかは見えにくいものです。ここでは、5つの経歴について、組み込みの開発と重なりやすい部分を取り上げます。
- Web・業務系アプリケーション開発の経験
- ゲーム・ミドルウェアなど組み込み以外のC/C++開発の経験
- 回路設計・ハードウェア設計の経験
- 生産技術・生産設備の経験
- 評価・テストの経験
実際にどこまで評価されるかは、応募先が担当する開発の範囲によって変わります。
Web・業務系アプリケーション開発の経験
Web・業務系の開発で身につけた進め方は、組み込みでもそのまま活かせます。要件を整理して設計に落とし、実装してテストで確かめるという流れは、組み込みでも同じように踏みます。設計書の作成やレビュー、不具合の切り分けといった作業も共通しています。
仕様を文書として残す、レビューで指摘を受けて直す、不具合の内容を報告するといった作業は、組み込みの現場でも日常的におこなわれています。進め方そのものを学び直す必要がないぶん、ハードウェアに関わる部分の学習に時間を回せます。
ゲーム・ミドルウェアなど組み込み以外のC/C++開発の経験
C/C++で開発してきた経験は、組み込みでそのまま活かせます。組み込み開発ではC言語が中心で、規模の大きい製品ではC++も使われます。言語を学び直す必要がないぶん、ハードウェアに関わる部分の学習に時間を回せます。
決められた性能の中で動かす経験があれば、応募のときに話せる材料になります。家庭用ゲーム機向けの開発では、本体が持つ性能を引き出すノウハウが求められます。スマートフォン向けでも、端末特有の制約の中で性能を引き出す作業が発生します。使えるメモリや処理性能に上限があるという組み込みの前提は、こうした開発と通じるところがあるでしょう。
回路設計・ハードウェア設計の経験
回路設計の経験は、組み込みエンジニアへの転職で強みになります。採用で見られるスキルのひとつが回路図を読む力で、ハードウェア設計の担当者であれば、すでに日常的に扱ってきたものです。設計書がそろっていない現場では、回路図から仕様を読み取って開発を進めることもあります。
部品を選ぶ場面でも、経験がそのまま使えます。マイコンの性能やメモリの容量、通信の方式を踏まえて部品を決める作業は、ソフトウェア側の担当者にとっても必要になります。電圧やノイズ、発熱といった電気的な制約を把握していると、ハードウェアの担当者と仕様を詰めるときにも話が通ります。
生産技術・生産設備の経験
生産設備の制御に関わってきた経験は、組み込みエンジニアの仕事と接点があります。扱う装置は違っても、センサーから受け取った値をもとに機械を動かすという考え方は共通しているためです。会社の規模によっては、設備の制御と機器の制御を同じ担当者が受け持つこともあります。
製造の現場を知っていることも、組み込みでは意味を持ちます。組み込みエンジニアが作るソフトウェアは、最終的に工場で何万台もの製品に書き込まれます。量産を前提とした進め方や、現場の担当者とのやり取りに慣れていれば、開発の後半で戸惑う場面は少ないでしょう。
評価・テストの経験
評価やテストに携わってきた経験は、組み込みの開発でそのまま活かせます。組み込みエンジニアの仕事にはテストの実施が含まれており、単体のテストから機器全体を通した試験まで、確認の範囲を広げながら品質を確かめていきます。
テストの設計をしてきた経験は、組み込みシステムの開発というフィールドでも価値を発揮できます。組み込みの機器は、出荷したあとにプログラムを直せないものが多く、想定していない操作や長時間の稼働でも止まらないことを、出す前に確かめておく必要があります。どんな条件を試すかを決め、抜けがないかを点検する仕事は、組み込みでは大切な工程のひとつです。
未経験から組み込みに入る場合、最初に任されるのは評価やテストの工程であることが多いとされています。テストを経験していれば、入社後に担当する仕事を具体的に思い描けるでしょう。

串田 聡太
Kushida Sota
相談を受けていると、「組み込みとは無関係だから」と職務経歴書に書かなかった経験が、実は応募先の求めるものだった、というケースに出会います。ぜひ一度、この章で紹介した経験以外も書き出してみることをおすすめします。
組み込みエンジニアの転職可能性は?
組み込みエンジニアの年収
年収は、転職を検討するうえで最も気になる条件のひとつでしょう。ただし、平均年収の数字だけを見ても、自分がいくら提示されるのかは判断できません。担当する工程や役職によって幅があり、他職種から移る場合は入社時に任される範囲でも変わってくるためです。
この章では、次の3つに分けて見ていきます。
- 組み込みエンジニアの平均年収
- スキルレベル別の年収レンジ
- 入社後に年収はどう上がっていくのか
組み込みエンジニアの平均年収
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、組み込みエンジニアが属する職業分類の平均年収は578.5万円です。平均年齢は37.1歳、1ヶ月あたりの労働時間は159時間となっています。
年代別に見ると、次のように推移します。
| 年代 | 平均年収 |
|---|---|
| 20〜24歳 | 363.0万円 |
| 25〜29歳 | 484.71万円 |
| 30〜34歳 | 559.52万円 |
| 35〜39歳 | 635.99万円 |
| 40〜44歳 | 686.29万円 |
| 45〜49歳 | 729.21万円 |
| 50〜54歳 | 722.41万円 |
| 55〜59歳 | 719.54万円 |
| 60〜64歳 | 654.4万円 |
20代後半から40代にかけて上がり続け、45歳から49歳でピークを迎えます。30代前半で全体の平均に届く計算です。
ハローワークの求人データでは、募集時の賃金の平均は月額35.6万円でした。前の年度より1.3万円上がっており、月ごとの推移を見ても、すべての月で前年を上回っています。
ただし、ここまでの数字は職業分類全体の平均です。担当する工程や経験年数によって幅があるため、自分の市場価値を見積もる目安としては、次に紹介するスキルレベル別のデータも確認しましょう。
参考:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)システムエンジニア(組込み、IoT)」
スキルレベル別の年収レンジ
同じ組み込みエンジニアでも、任される仕事の範囲によって年収は変わります。厚生労働省の調査では、設計・構築を担当する人の年収が、スキルレベル別に示されています。
| スキルレベル | 年収の範囲 |
|---|---|
| ITSSレベル1〜2 | 420.0万円 〜 620.0万円 |
| ITSSレベル3 | 450.0万円 〜 700.0万円 |
| ITSSレベル4 | 500.0万円 〜 780.0万円 |
| ITSSレベル5以上 | 600.0万円 〜 950.0万円 |
ITSSは、ITの仕事に必要な能力を7段階で示した指標です。レベル1は上位者の指導を受けて作業する段階、レベル2は指導を受けながら一部を独力で進める段階にあたります。レベル3になると要求された作業をすべて独力で遂行でき、レベル4では専門分野を持つ技術者として、課題の発見と解決をリードする立場が想定されます。
レベルが上がるほど、年収の幅も広がります。レベル1から2では下限と上限の差が200万円ですが、レベル5以上では350万円に開きます。同じ段階にいても、担当する領域や勤め先によって差が出るということがわかります。
入社後に年収はどう上がっていくのか
他職種から移った直後は、上位者の指導を受けながら作業する段階から始まります。スキルレベル別のデータでは、この段階の年収は420万円から620万円の範囲です。
年収が変わる節目は、要求された作業を独力で進められるようになったときです。この段階に上がると450万円から700万円の範囲になり、さらに専門分野を持ち、課題の発見と解決をリードする立場になると500万円から780万円に広がります。
年代別の推移を見ても、30代前半で559.52万円、30代後半で635.99万円と上がっていき、45歳から49歳の729.21万円でピークを迎えます。
ひとつの開発をひととおり経験し、顧客の要件を聞き取って開発までを過不足なく進められるようになれば、一人前と見なされます。複数の開発を経験することに加えて、機械的な部分や通信など、幅広い領域にわたって経験を積むことも大切です。

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組み込みエンジニアの働き方の実態
組み込みエンジニアに転職したときの働き方はどうなるのでしょうか。公的なデータから見ていきます。
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、1ヶ月あたりの労働時間は159時間です。1日8時間で20日働くと160時間なので、極端に残業が多い職種ではないことがうかがえます。土日祝日が休みの会社が多く、フレックスタイム制や裁量労働制をとっている会社も多いとされています。労働時間の短縮に取り組む会社も増えています。
在宅勤務との相性は、よくありません。実際の製品や装置、ネットワークやサーバーが必要になるためです。機密情報を扱う場合も、自宅ではなく職場での作業になります。ただしコロナ禍以降、仕事の一部を在宅でおこなったり、リモートで打ち合わせをしたりする機会は増えています。
勤務地は、職場の多くが都市部に集中しています。製品を作るメーカーやシステム開発会社に勤める人が多く、就業者の年齢は30代から50代が中心です。
参考:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)システムエンジニア(組込み、IoT)」
「組み込みエンジニアはやめとけ」「オワコン」と言われる5つの理由
組み込みエンジニアを調べていると、「やめとけ」「オワコン」といった言葉を目にすることがあります。実際に検索すると関連した記事が並ぶため、不安になった人もいるでしょう。
挙げられる理由には、仕事の構造上どうしても避けられないものと、会社選びで変えられるものが混ざっています。この章では、実際に語られている5つの理由を取り上げ、それぞれがどちらに当たるのかを整理します。
- 人手不足で1人あたりの負担が大きい
- 仕様変更や納期の厳しさがある
- 身につける範囲が広い
- 新しい技術を試す機会が少ない
- 不具合やバグに対する責任の重さ・プレッシャーが大きい
読んだうえで、自分にとって許容できる条件かどうかを判断してください。
人手不足で1人あたりの負担が大きい
組み込みの現場では、人手不足が続いています。IoT機器や自動車、産業機器と活躍の場が広がる一方で、担い手の供給が追いついていません。その結果、1人あたりの業務量が多くなり、残業や休日出勤が発生しやすくなります。とくに納期前やトラブルが起きたときに、長時間労働になりやすい状況です。
ただし、これは会社の選び方で変えられる部分です。公的なデータで見ると、この職種の労働時間は1日8時間で20日働いた場合とほぼ同じ水準です。労働時間の短縮に取り組む会社も増えており、フレックスタイム制や裁量労働制をとっている会社も多いとされています。
人手不足そのものは変わりませんが、現場によって働き方には差があります。応募する段階で、残業時間や休日の実績を確かめておきましょう。
仕様変更や納期の厳しさがある
組み込みの開発では、進行中に仕様が変わることがあります。市場の動きやクライアントの要望に応じて、機能の追加や変更が求められるためです。設計の見直しやコードの修正が必要になり、スケジュールに影響が出ます。
納期そのものも厳しくなりがちです。製品の発売日が先に決まっているため、開発の都合で動かせません。出荷の日程が固定されている以上、しわ寄せは開発期間に来ます。
組み込みエンジニアとして働く上で、完全には避けられないポイントです。そのため、仕様変更や納期のコントロールのために組織として取り組んでいる工夫がないか、面接で聞いておきましょう。
身につける範囲が広い
組み込みエンジニアには、ソフトウェアとハードウェアの両方の知識が求められます。C言語での実装に加えて、マイコンの構造や回路図の読み方、通信の規格まで扱うことになります。
ほかのソフトウェア開発と比べて、押さえる範囲が広いのは確かです。組み込みエンジニアとして働きながら、学びを継続することになります。
この点は、仕事の構造から来るものです。しかし、研修制度や資格の取得支援など、学習を後押しする仕組みがある会社もあります。プライベートを削った学習時間や、学習にかかる費用を抑えながら成長を目指せる環境かどうか、求人票などで見極めましょう。
新しい技術を試す機会が少ない
組み込みの開発では、新しい技術の導入に慎重になる傾向があります。安定して動くことが優先されるため、実績のある技術が選ばれやすいからです。その結果、最新のフレームワークや開発手法を試す機会は少なくなります。ほかの分野のエンジニアと比べて、技術的な刺激を受けにくいと感じる人もいるでしょう。
背景にあるのは、出荷したあとに直せない製品が多いという前提です。試したことのない技術を採用して不具合が出れば、取り返しがつきません。枯れた技術を選ぶのは、製品の性質から来る判断です。
ただし、分野によって状況は変わります。ネットにつながる機器やAIを取り入れた開発では、新しい技術に触れる場面が出てきます。技術の新しさを重視するなら、応募先がどの領域の製品を扱っているかを見ておきましょう。
不具合やバグに対する責任の重さ・プレッシャーが大きい
組み込みのソフトウェアは、製品の動作そのものを担っています。コードや設計に不具合があれば、製品全体の信頼性や安全性に影響します。自動車の制御システムや医療機器のように命に関わる製品では、ひとつのミスが重大な事故につながる可能性もあります。
正確さを求められ続ける状況は、精神的な負担になります。失敗への恐れと、高い精度への要求が重なるためです。
組み込みエンジニアは製品が世に出たあとのことまで引き受ける仕事のため、こうした責任やプレッシャーとはうまく向き合っていく必要があります。

串田 聡太
Kushida Sota
自分にあう組み込みエンジニアの環境を見つけるために、応募先の体制を個別に確かめることをおすすめします。「やめとけ」と書かれていることに対して不安や悩みがあれば、転職エージェントに相談するのもひとつの手です。転職を決めていなくても、蓄積された現場の情報をもとに、一緒に整理します。
どれが「やめとけ」?
組み込みエンジニアの将来性と需要
「オワコン」という言葉が気になった人ほど、将来どうなるのかは確かめておきたいところでしょう。この章では、公的なデータと国の方針から、組み込みエンジニアの需要がどう動いているかを見ていきます。
- IoT・エッジAIで広がる需要
- EV化・自動運転で高まる車載ソフトウェアの比重
- 求人データで見る需要の実態
結論から言えば、需要は広がる方向にあります。製品がインターネットにつながり、AIの技術が取り入れられるようになったことで、この職種が関わる領域は増えています。
IoT・エッジAIで広がる需要
製品がインターネットにつながるようになり、組み込みエンジニアが関わる範囲は広がっています。機器の中で動くプログラムに加えて、データをサーバーへ送る処理や、サーバー側の開発まで担当する仕事が増えました。
もうひとつの変化が、機器の側でAIの処理をおこなう流れです。半導体メーカーが供給するプロセッサやマイコンには、AIの処理を担う機能が標準で載るようになってきました。AIの技術は、当初クラウドやサーバー上で動かすものでしたが、機器の側で処理する形へと広がってきました。
組み込み開発やシステム開発にAIの技術が取り入れられ始めたことで、この職種が活躍する場は広がっています。扱う技術が増えるぶん学ぶことも増えますが、仕事そのものが減る方向ではありません。
EV化・自動運転で高まる車載ソフトウェアの比重
自動車の分野では、車の価値に占めるソフトウェアの比重が上がっています。車両の付加価値のうち、半導体やソフトウェアが占める割合は相対的に増えています。
背景にあるのは、ソフトウェアを起点とした車両開発への転換です。ハードウェアとソフトウェアを分けて設計し、販売後もソフトウェアの更新で機能を追加していく作りに、各社が舵を切っています。自動運転の高度化や、走行データの活用も、この流れの中にあります。
この分野の競争では、ソフトウェア開発が重要な要素だと位置づけられています。一方で日本はソフトウェア人材の不足が課題とされ、育成と確保に向けた取り組みが進められています。国を挙げて人材を求めている領域だと言えます。
参考:経済産業省・国土交通省「モビリティDX戦略」
求人データで見る需要の実態
需要の広がりは、求人のデータにも表れています。厚生労働省の職業情報提供サイトによると、この職種の有効求人倍率は4.26に達しています。求職者1人に対して4件を超える求人がある計算になります。
募集時の賃金も上向いています。求人賃金の平均は前の年度を上回り、月ごとの推移を見ても、直近の1年はすべての月で前年を超えました。
求人が多く、賃金も上がっているという2つの傾向は、転職を考える側にとって追い風になります。
参考:厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)システムエンジニア(組込み、IoT)」

組み込みエンジニアのキャリアパスは?おすすめの業界や職種、資格、転職のポイントを解説
求人動向に詳しいアドバイザー
未経験から組み込みエンジニアに転職する4ステップ
ここまで読んで、組み込みエンジニアを目指すと決めたら、何から手をつければよいのでしょうか。組み込みの経験がない状態から転職する場合の進め方を、4つのステップに分けて整理します。
- 自分の経験と目指す開発領域を結びつける
- C言語とマイコン制御の基礎を実機で身につける
- 資格や制作物で基礎理解を示せる状態にする
- 入口になりやすい求人・企業を選ぶ
まずは自分の立ち位置を確かめるところから始めましょう。
自分の経験と目指す開発領域を結びつける
最初にやることは、転職の方向性を決めることです。そのために、自分の経験と、目指したい開発領域を突き合わせてみましょう。組み込みといっても、扱う製品も担当する工程も会社によって違います。先に行き先を決めておかないと、学習の範囲も応募先も絞れません。
考える順番は2つあります。ひとつは、自分の経験が活きる領域から選ぶやり方です。評価やテストの経験があれば品質を確かめる工程から、回路設計の経験があればハードウェアに近い領域から、というように、持っているものを起点にします。
もうひとつは、関わりたい製品から選ぶやり方です。自動車、家電、産業機器、IoT機器では、求められる品質の水準も開発の進め方も変わります。作りたいものがはっきりしているなら、そこから逆算して必要な知識を集めるほうが続きます。
どちらから入っても構いませんが、応募の段階までには、どちらも言葉にできる状態にしておきましょう。なぜこの領域なのか、自分の何が使えるのかを説明できるかどうかで、書類や面接での伝わり方が変わります。
C言語とマイコン制御の基礎を実機で身につける
目指す領域が決まったら、学習に入ります。まずはC言語の基礎からです。組み込み開発の中心になる言語で、基本的な文法を学び、簡単なプログラムを書けるようになるところが出発点になります。C言語を押さえておけば、発展形にあたるC++の学習にも進みやすくなります。
次の段階が、実機を使った学習です。書いたプログラムをマイコンに書き込み、実際に動かしてみます。ArduinoやRaspberry Piといった小型のボードは、こうした学習に向いています。とくにArduinoはOSを載せていないため、組み込みの仕組みが学びやすいでしょう。
本を読むだけでは、この職種の学習は完結しません。ハードウェアを制御するプログラムを書く仕事なので、実際にモノが動く経験を積んでおくことが、次のステップにもつながります。
資格や制作物で基礎理解を示せる状態にする
学習を進めたら、その成果を相手に伝えられる形にします。実務経験がないぶん、何をどこまで理解しているのかを示す材料が必要になるためです。
ひとつは資格の取得です。基礎を体系的に学んだことを示す手段として、採用の場面でも評価されています。組み込みに特化したものなら、スコアで実力を測れるETECが使えます。IT全般の基礎を示すなら、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験が候補になります。
もうひとつが制作物です。マイコンボードを使って作ったものがあれば、実際に手を動かした証拠になります。LEDを点灯させるといった簡単なプログラムからでも構いません。資格より、実際にモノを動かした記録のほうが選考で重視されることもあります。
どちらか一方でなく、両方そろえておくと説明しやすくなります。学んだ範囲を資格で示し、手を動かした経験を制作物で示す、という組み合わせです。
入口になりやすい求人・企業を選ぶ
最後に、応募先を選びます。組み込みの現場では人材の不足が続いており、未経験者を歓迎する求人も出ています。基礎から教育する方針をとる企業が多く、社内研修やOJTで知識を身につけられる環境が整っているためです。
担当する工程にも、入りやすさの差があります。テストや運用・保守は、経験の浅い段階で任されることが多い工程です。前職で評価やテストに関わってきたなら、この入口はとくに現実的でしょう。
求人票を見るときは、どの工程から任されるのかを確かめてください。同じ「組み込みエンジニア」という肩書きでも、担当する範囲は会社によって変わります。設計まで任される求人と、テストから始める求人では、入社後に求められるものが違います。

串田 聡太
Kushida Sota
求人票の「組み込みエンジニア」という肩書きだけでは、実際に何を任されるかは読み取れません。業務内容の欄に書かれた工程の範囲に、「設計から実装まで」とあれば上流を含みますが、「動作確認」「評価」といった言葉が並ぶ場合は、テスト工程が中心になります。テストは未経験から入りやすい一方、数年後にどこまで任されるのかはあらかじめ確認したいところです。
面接対策は回数無制限でサポート
組み込みエンジニアへの転職ならテックゴー
組み込みエンジニアを目指すと決めても、どの領域から入るか、自分の経験がどこで評価されるかは、ひとりで判断しにくいところです。
テックゴーは、エンジニアに特化した転職エージェントです。アドバイザーには元エンジニアやITコンサル出身者が多く、求人票に書かれた業務内容から、実際に任される工程を読み解くところから相談できます。前職の経験が組み込みのどこに接続するかも、一緒に整理していきます。
- 元エンジニア・ITコンサル出身のアドバイザーが、開発現場の前提を踏まえて相談に乗る
- 面接対策は回数に制限がなく、学習の成果や制作物の伝え方まで一緒に準備できる
- 年収交渉をアドバイザーが代行し、提示額に納得したうえで入社を決められる
- 平均年収アップ金額144万円、年収アップ成功率86%の実績がある
未経験の領域に応募する場合、学習の成果や制作物をどう伝えるかで評価が変わります。納得できるまで準備を重ねられる体制です。
まずは、自分の経験が組み込みエンジニアのどの領域で通用するのかを聞いてみてください。
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まとめ
組み込みエンジニアは、自動車や家電といった製品の中で動くソフトウェアを開発する職種です。ハードウェアの制約を前提に設計する点が、ほかのソフトウェア開発との違いになります。
人手不足が続いており、求人も賃金も上向いています。「やめとけ」と言われる理由も実際に存在しますが、会社の選び方で変えられる部分と、そうでない部分があります。
組み込みの経験がなくても、前職で積んだものが活きる場面はあります。自分が持っているものを起点に、目指す領域を決めるところから始めてみてください。判断に迷ったときは、エンジニア特化の転職エージェント「テックゴー」のように、職種ごとの開発現場に詳しいエージェントへ相談してみるのもひとつの方法です。
よくある質問
組み込みエンジニアは文系でもなれますか?
文系でも、組み込みエンジニアになれます。入職にあたって、特定の学歴や資格が必要とされる職種ではありません。
ただし、中途採用で見られるのは学部や学科ではなく、どのような開発をしてきたかという経験です。文系の出身であっても、C言語の基礎とハードウェアの知識を学び、それを示せる状態にしておけば、応募できる求人はあります。
ソフトウェア開発の実務経験がまったくなくてもなれますか?
可能性はあります。組み込みの現場では人材の不足が続いており、未経験者を歓迎する求人も出ています。基礎から教育する方針をとる企業が多く、社内研修やOJTで知識を身につけられる環境が整っているためです。
入口になりやすいのは、テストや運用・保守の工程です。経験の浅い段階で任されることが多く、ここから設計や実装へ範囲を広げていく進み方になります。ただし、何も準備せずに応募するのは現実的ではありません。C言語の基礎と、実機を動かした経験は用意しておきましょう。
独学でも組み込みの基礎は身につきますか?
基礎の部分は身につきます。C言語の文法を学び、ArduinoやRaspberry Piといったマイコンボードで実際にプログラムを動かすところまでは、独学で進められます。書籍や動画の教材もそろっています。
一方で、実務で必要になる部分は現場でしか学べません。複数の開発を経験し、顧客の要件を聞き取って開発まで進められるようになって、一人前と見なされる職種です。独学で基礎を固め、入社後に実務を積むという順序になります。
向いている人・向いていない人は?
向いているのは、細かい作業を正確に進められる人です。不具合のないシステムを作るには、見落としのない注意力が要ります。問題が起きたときに原因を論理的に分析できること、長時間のデバッグに粘り強く取り組めることも、この職種では効いてきます。製品開発は複数の担当者と進めるため、チームで協力できることも欠かせません。
逆に、一気に成果を出したい人や、個人で完結する作業を好む人には、合わない場面が多くなります。組み込みの開発は細かい作業の積み重ねであり、問題が起きたときには情報の共有や共同での解決が必要になるためです。
組み込みエンジニアはAIに置き換えられますか?
完全に置き換えられる可能性は高くありません。AIはコード生成やテスト支援に活用されていますが、組み込み分野では次の点で人の判断が必要になります。
・ハードウェアの制約を踏まえて設計を判断する ・安全規格への対応を確認する ・実機の環境で不具合の原因を切り分ける ・仕様変更が及ぶ影響範囲を見極める
とくに車載や医療機器では、安全性を担保する設計責任が重い分野です。最終的な判断や責任はエンジニアが担います。AIは補助ツールとしての活用が進む一方、設計力や専門性を持つ人材の価値は維持されます。
登録は1分で完了!
