SESとSIerの違いは?年収差とどっちを選ぶべきか解説
2026年09月11日更新
SESとSIer、この2つの違いを説明できるでしょうか。IT業界でよく目にする言葉ですが、何がどう違うのかをはっきり答えられる方は多くありません。
わかりにくいのには理由があります。SESは契約のかたちを指し、SIerは企業のかたちを指す言葉であるため、比べている軸がそもそも違うのです。
この記事で扱うのは、次の4点です。
- 契約形態ごとの指揮命令権と責任範囲の違い
- 年収差の実態と、その差が生まれる仕組み
- 自分がどちらに向いているかを判断する基準
- 求人票と面接からSES企業の実態を見抜く方法
読み終えるころには、いまの働き方が自分に合っているか、次にどちらを選ぶべきかが判断できるはずです。

著者
高久 侑歩
(Takaku Yuho)
新卒で技術接客業経験後、株式会社リクルートにて法人営業を行う。企業の経営課題を解消するコンサル営業として多くの中小企業の立て直しを経験。 その後、企業成長へ貢献したいと思い、IT企業にてWebコンサルタントとして従事。そこで、エンジニアファーストではない現場の実態から、企業成長の妨げの根本はここにあるのではないか?と考え、My Vision・ITエンジニアのCAへ転職。企業の実態や求める人材を誰よりも深く理解し、候補者様のキャリアビジョンと精度の高いマッチングを実現し、候補者様・企業様の「成長」をサポート。
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監修者
川村 莉子
(Kawamura Riko)
名古屋工業大学卒業後、新卒でDirbatoに入社。通信会社に対する業務改善プロジェクトや次世代ネットワーク移行案件のPMOなどに従事。自身のコンサルタント経験を活かした、IT系コンサルファームへの開発支援を得意とする。
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目次
CONTENTS
SESとSIerとは何を指す言葉か
SESとSIerは同じ土俵で比べられがちですが、そもそも言葉の性質が違います。SESは契約のかたちを表す言葉であり、SIerは企業のかたちを表す言葉です。だからこそ、SIerと名乗る会社がSES契約でエンジニアを送り出すという、一見ねじれた状況も普通に起こります。
契約と企業という別々のものを比べているのです。この前提を先に押さえておくと、このあと解説する年収差も働き方の違いも、すべて同じ理屈で説明がつくようになります。まずは、それぞれの言葉が何を指しているのかを確認しましょう。
SESはエンジニアの技術力を提供する契約形態
SESは「システムエンジニアリングサービス(System Engineering Service)」の略で、エンジニアの技術力そのものを提供するサービスを指します。契約形態としては「準委任契約」(民法第656条)が使われます。
SESで一般的なのは、業務を遂行した時間に応じて報酬が発生する形です。たとえば月140〜180時間といった稼働時間の幅をあらかじめ決めておき、その範囲で働いた分に対して報酬が支払われる精算方法が多く見られます。
この形であれば、システムが予定どおり完成しなかったとしても、エンジニア側が完成責任を問われることはありません。負っているのは「善管注意義務」、つまりプロとして必要な注意を払って業務にあたる義務までです。
ただし、準委任契約にはもうひとつの類型があります。民法第648条の2に定められた成果完成型で、この場合は成果の引渡しと報酬が結びつきます。契約書に成果物の定義が書かれている場合は、完成責任の有無を確認しておきましょう。
もうひとつ押さえておきたいのが、SESでは雇用主と就業場所が分かれる点です。給与を払うのは自社、しかし毎日顔を合わせて仕事を評価するのは常駐先の人たちという二重構造になります。この構造が、評価の見えにくさや年収の頭打ちに直結していきます。
なお、SESは常駐が前提だと思われがちですが、契約上は常駐が必須というわけではありません。近年はリモートや自社作業で進める案件も増えています。
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SIerはシステム開発を一括で請け負う企業の総称
SIerは「システムインテグレーター(System Integrator)」を略した呼び方で、顧客のシステムを企画から設計・開発・運用保守まで一括で引き受ける企業を指します。SESが契約を指す言葉であるのに対して、SIerは会社そのものを指す言葉です。
SIerが結ぶ契約は「請負契約」(民法第632条)が中心になります。請負では、決められた仕様のシステムを完成させて納品するところまでが義務です。納品後に不具合が見つかれば「契約不適合責任」を負い、無償修正や損害賠償の対象にもなります。SESが時間を売っているのに対して、SIerは完成したシステムを売っていると捉えると、責任の重さの違いがつかみやすくなるでしょう。
また、SIerは成り立ちによって大きく3つに分類されます。
| 種類 | 成り立ち | 主な顧客 |
|---|---|---|
| メーカー系 | 電機・コンピューターメーカーの情報システム部門が分社化 | 親会社の製品を導入する企業 |
| ユーザー系 | 金融・商社・通信などの事業会社の情報システム部門が独立 | 親会社とそのグループ企業 |
| 独立系 | 特定の親会社を持たず、単独で創業 | 業種を問わず幅広い企業 |
ただし、注意したいことがひとつあります。SIerはあくまで会社の分類にすぎないという点です。SIerに分類される会社が、自社の社員を準委任契約で客先に出すケースは珍しくありません。求人票にSIerと書かれているからといって、請負開発を自社の中で進められるとは限らないのです。
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SESとSIerの5つの違い
言葉の粒度が違うとはいえ、実際に働くうえでは両者にはっきりした差が現れます。ここでは、若手エンジニアの日々の仕事と、数年後の経歴に効いてくる5つの観点で並べます。
| 比較する観点 | SES | SIer |
|---|---|---|
| 契約形態 | 準委任契約が中心 | 請負契約が中心 |
| 働く場所 | 客先に常駐するケースが多い | 自社の開発拠点が基本 |
| 担当する工程 | 実装・テスト・運用保守が中心 | 要件定義から運用保守まで |
| 身につくスキル | 環境が変わっても立ち上がれる力 | 1つのシステムを通しきる力 |
| 案件終了時 | 次のアサインまで待機 | 社内の次のプロジェクトへ |
ただし、この表はあくまで典型例です。実態は、所属する会社が下請け構造のどこにいるかで大きく変わります。なぜこうした差が生まれるのかを、1つずつ分解します。
契約形態が準委任か請負かで違う
SESの準委任契約とSIerの請負契約の違いは、法律上の分類にとどまりません。会社があなたに何を期待するかまで決めています。
準委任契約では、エンジニアが現場で稼働した時間に対して報酬が発生します。つまり、あなたが現場に居続けることそのものが会社の売上です。技術的に飛び抜けた成果を出さなくても、契約が続いている限り会社に入る金額は変わりません。
一方、請負契約で報酬が発生するのは、完成して検収が通ったシステムに対してです。納期までに動くものを用意できなければ売上は立たず、不具合が出れば契約不適合責任を負って無償で修正することになります。会社が背負うリスクは重く、その分だけ会社は、担当者・品質・納期の管理に強い関心を持ちます。
この差は、評価制度のかたちにそのまま出てきます。稼働時間が売上になる会社では、評価の中心が単価と稼働率になりがちです。完成が売上になる会社では、担当した工程と成果物の品質が評価の対象になります。
働く場所が客先か自社かで違う
SESは客先常駐が基本です。とはいえ、SIerの社員も客先に常駐します。大規模なプロジェクトでは、元請けのSIerが顧客のオフィスにチームごと入ることも珍しくありません。
違うのは、場所そのものではなく入り方です。SESは個人単位でアサインされ、常駐先のチームに合流して作業を進めます。対してSIerは案件をチーム単位で受け、自社の指揮系統を保ったまま現場に入ります。
この違いは、手に入る情報の量に効いてきます。個人でアサインされると、自分が担当する作業の前後で何が起きているのかが見えにくくなります。なぜこの仕様になったのか、この機能は誰の要望なのか。そうした背景が共有されないまま、切り出されたタスクだけが降りてくる状態になりがちです。
常駐先の設計会議に呼ばれるか、意思決定の場に同席できるかどうかで、得られる情報の量は大きく変わります。背景を知ったうえで実装した経験は、そのまま職務経歴書に書ける材料になります。
なお、同じ常駐でも元請けに直接入っていれば事情は変わります。顧客とやり取りする機会があり、上流の議論に触れられる現場も存在します。
工程の違いはSESかSIerかより「元請けとの距離」で決まる
システム開発は、要件定義・基本設計・詳細設計・実装・テスト・運用保守という流れで進みます。「SESは下流工程、SIerは上流工程」という説明を見かけますが、これは正確ではありません。
SESでよく利用される準委任契約そのものに、下流工程しか担当できないという制約はないからです。実際に、要件定義の支援やPMO(プロジェクトの進行を横断的に支援する役割)など、上流工程の業務を準委任契約で担当するケースもあります。一方、SIerでも案件や立ち位置によっては、実装やテストなどの下流工程を担当します。
では、なぜSESは下流工程に偏りやすいのでしょうか。大きく影響するのが、契約形態ではなく商流上の立ち位置です。商流とは、顧客から仕事が流れてくる経路のことを指します。顧客から直接受注する元請け企業が要件定義や基本設計を担い、その下の2次請け、3次請けへと実装やテストが分担される構造では、下流に位置する企業ほど担当できる工程が限られます。
つまり、転職先を選ぶときは「SESかSIerか」だけで判断するのではなく、どの企業から案件を受け、どこまで顧客に近い立場で仕事をしているのかを見ることが重要です。同じSES企業でも、元請け直の案件を持つ会社と、3次請け以降の案件が中心の会社では、経験できる工程や5年後のキャリアに大きな差が生まれます。
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身につくスキルの方向性が違う
SESでは、配属先が変わっても短期間で業務に適応する力を身につけやすい傾向があります。半年から2年ほどで現場が変わるケースもあり、初めて触れるコードを読み解き、各現場のルールに合わせて業務を進める経験を積めるでしょう。扱う言語やフレームワークの幅も広がります。
一方、SIerでは、1つのシステムを上流から納品まで進める力を磨きやすい点が特徴です。要件整理や見積もり、ベンダーとの調整などを経験することで、技術力に加えてプロジェクト全体を管理する力も身につきます。
転職市場では、使える言語の数だけ評価が決まるわけではありません。重視されるのは、担当したシステムの規模・関わった工程・担った役割です。
たとえば「5つの言語を扱える」という経験より、「決済機能の詳細設計から結合テストまで担当した」と示すほうが、経験の深さや担当範囲を具体的に伝えられます。
テストや運用保守だけを数年間担当している場合、設計や開発の経験を職務経歴書で示しにくくなります。担当工程が広がっていないと感じたら、スキルだけでなく、現在のアサイン状況も見直してみましょう。
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契約が終わったときのリスクの負い方が違う
案件が終わったあとに何が起きるかにも、差があります。
SESでは、契約が切れると次のアサインが決まるまで待機に入ります。雇用契約は自社と結んでいるため給与の支払いは続きますが、会社にとって待機期間は売上が立たない時間です。長引けば、希望とは違う案件を勧められることもあるでしょう。
SIerでは、1つのプロジェクトが終われば社内の次の案件に移ります。ただし、リスクがないわけではありません。請負である以上、見積もりを外したプロジェクトの赤字は会社が被り、現場のエンジニアは長時間労働で埋め合わせる側に回ります。
SESのリスクは仕事が途切れることに、SIerのリスクは仕事が終わらないことに現れます。どちらが軽いという話ではなく、性質が違うだけです。
若いうちに意識しておきたいのは、待機や炎上プロジェクトに直面したとき、その期間が経歴として残るかどうかです。待機期間は職務経歴書に書けません。炎上したプロジェクトは、苦しくても納品まで担当すれば1行の実績になります。
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SESとSIerと派遣・請負は何が違うのか
SESについて調べると、派遣や請負との違いがよく出てきます。重要なのは、契約形態だけでなく「誰が指示を出すのか」「何に責任を負うのか」です。
派遣では派遣先がエンジニアに直接指示を出します。一方、SESで一般的な準委任契約では、所属企業が指示を出すのが基本です。請負では成果物を完成させる責任を負います。
また、SIerとSESの違いも契約だけでは決まりません。実際の担当工程は商流に左右されるため、転職先を選ぶ際は、元請けとの距離・契約形態・担当工程まで確認することが重要です。
派遣は指揮命令権が客先にある
労働者派遣では、雇用契約を結ぶ会社と業務の指示を出す会社が分かれます。給与を払うのは派遣元、作業内容を指示するのは派遣先です。
そのため、派遣先の社員が派遣スタッフに直接指示を出しても問題は生じません。作業の順序を変えることも、残業を依頼することも、指揮命令権の範囲に含まれます。
一方で、派遣には法律上の制限がかかります。同じ組織単位で同じ人が働ける期間は原則3年までです。派遣元には、段階的な教育訓練の実施やキャリアコンサルティングの機会提供、雇用安定措置が労働者派遣法で義務づけられています。
SESは指揮命令権が自社に残る
SESで一般的に使われるのは準委任契約です。この場合、指揮命令権は所属企業に残るため、常駐先の社員がエンジニアへ直接業務指示を出すことはできません。指示は自社の責任者を経由するのが原則です。
ただし、契約と実態が一致しないケースもあります。常駐先から直接タスクを割り振られ、勤怠まで管理されている状態は、契約の名称にかかわらず労働者派遣に該当すると判断される可能性があります。いわゆる偽装請負です。
厚生労働省の基準では、次のような点から実態に即して判断されます。
- 業務の遂行方法に関する指示を誰が出しているか
- 始業終業時刻や休暇の管理を誰がおこなっているか
- 配置や担当替えを誰が決めているか
- 業務に必要な機材や専門技術を自社で用意しているか
指揮命令権がどこにあるかは、評価の仕組みにも関わります。常駐先で働きながら、給与や評価を決めるのは自社という構造になるためです。
参考:労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集(厚生労働省)
請負は成果物の完成に責任を負う
請負契約では、仕事を完成させることが義務になります(民法第632条)。納期までに動くものを納品できなければ報酬は発生せず、納品後に不具合が見つかれば契約不適合責任を負います。
ただし、発注者が請負側のエンジニアに直接指示を出すことはできません。指揮命令権が発注者に移るのは派遣だけで、準委任と請負はこの点では同じ扱いです。
3つの違いを整理すると、次のようになります。
| 比較する観点 | 労働者派遣 | 準委任(SES) | 請負 |
|---|---|---|---|
| 指揮命令権 | 派遣先にある | 自社にある | 自社にある |
| 報酬が発生する対象 | 働いた時間 | 業務の遂行 | 仕事の完成 |
| 完成責任 | 負わない | 原則として負わない | 負う |
| 契約不適合責任 | 負わない | 原則として負わない | 負う |
| 根拠となる法律 | 労働者派遣法 | 民法第656条 | 民法第632条 |
(※)準委任契約のうち成果完成型(民法第648条の2)では、成果の引渡しが報酬の条件になります。
SIerの契約は請負とは限らない
SIerは、顧客からシステム開発や導入を受注し、自社のエンジニアや協力会社と開発体制を組んでプロジェクトを進めます。契約には請負と準委任の両方があり、「SIer=請負」と決まっているわけではありません。
システムの仕様や完成条件が明確な開発では、成果物の完成に責任を持つ請負契約が使われます。一方、要件定義やPMO、運用保守など、業務の遂行そのものが目的となる場合は、準委任契約が使われることもあります。
また、SIerが請負で受注した案件の一部を、2次請けや3次請けの企業に委託するのも一般的です。この場合、下請け企業が準委任契約でエンジニアを参画させるケースもあります。
そのため、SIerとSESを単純に「請負と準委任」で分けることはできません。転職先を選ぶときは、どの契約形態で、どの商流から案件を受け、どの工程を担当するのかまで確認することが重要です。
SESとSIerによくある3つの誤解
SESとSIerには、「SESは下請けばかり」「SIerなら上流に行ける」といったイメージがあります。ただし、会社の業態だけでは実際の仕事内容や商流までは判断できません。
ここでは、転職先を選ぶときに判断を誤りやすい3つの見方を整理します。
- SES企業に所属していても、必ずしも商流の下層とは限らない
- SIerに転職しても、すぐに上流工程を担当できるとは限らない
- SESと派遣は契約だけでなく、制度上の保護にも違いがある
SESはすべて多重下請けの下層だという誤解
SES企業だからといって、必ず商流の下層にいるわけではありません。会社の規模や「SES」という業態だけでは、商流上の位置は判断できません。中小規模の企業でも、顧客から直接受注しているケースはあります。
一方で、商流が深くなるほど、条件が厳しくなる傾向はあります。公正取引委員会が2022年に公表した調査では、実質的な業務をおこなわない中間事業者が存在すると感じたことがある割合は、元請けの18.5%に対して中間下請けが29.2%、最終下請けが33.5%でした。準委任契約で最大5社が間に入るケースや、6次下請けとして参加した事例も報告されています。
自分が商流のどこにいるかを確認するには、求人票だけでなく、次の点を確認してみましょう。
- 契約書や面談時に発注元の企業名を確認する
- 常駐先との間に何社入っているかを確認する
- 自社の主要取引先や取引実績を確認する
参考:ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書(公正取引委員会)
SIerなら必ず上流工程に関われるという誤解
SIerに転職すれば、すぐに上流工程を担当できるとは限りません。下請けとして参画する案件では、実装やテストが中心になることもあります。
また、元請けのSIerでも、入社直後から要件定義や顧客折衝を任されるとは限りません。経験の浅い社員は、設計書の作成やレビュー、進捗・課題管理などから担当するケースもあります。
「上流工程の案件がある会社」と「自分が上流工程を担当できる会社」は別です。
そのため、面接では「上流工程を担当できますか」と聞くだけでは不十分です。「入社3年目のエンジニアは、普段どの工程を担当していますか」と聞けば、若手にどこまで仕事を任せているのかが具体的にわかります。
SESは派遣と同じだという誤解
SESと派遣は、どちらも客先に常駐して働くケースがあるため、同じように見えることがあります。しかし、契約上の指揮命令権や、法律による保護には違いがあります。
労働者派遣法では、派遣元に教育訓練、キャリアコンサルティングの機会提供、雇用安定措置、均等・均衡待遇などの義務が課されています。
一方、準委任契約でエンジニアを提供するSES企業には、これらの義務がそのまま適用されるわけではありません。
ただし、SESだから雇用が不安定というわけでもありません。正社員として雇用するSES企業も多く、案件の待機期間中も給与が支払われる会社があります。
そのため、「SESと派遣のどちらがよいか」だけで判断する必要はありません。転職先を選ぶ際は、契約形態に加えて、教育制度や資格取得支援、待機中の給与、キャリア面談など、会社独自のサポートがどこまで整っているかを確認することが重要です。
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SESとSIerに年収差はあるのか
結論から言えば、SESとSIerの年収を直接比較できる公的データは存在しません。賃金構造基本統計調査の分類軸は産業・職種・企業規模であり、契約形態や業態では集計されていないためです。
そこで本記事では、SESの年収相場とITエンジニア全体の平均を並べ、そのうえで年収を左右する要素を整理します。重要なのは、SESかSIerかという所属先だけでなく、年代・担当工程・案件単価によって年収が変わることです。
- 年代が上がるほど、SESとITエンジニア全体の年収差は広がる
- 担当工程による年収差は、業態の違いより大きい
- SESでは案件単価と還元率が年収を左右する
年代別に見た年収の差
年代別に見ると、SESの年収相場とITエンジニア全体の平均には差があります。
| 年代 | SESの年収相場 | ITエンジニア全体の平均 | 差 |
|---|---|---|---|
| 20代前半(22〜24歳) | 約280〜350万円 | 約421.2万円 | 約70万〜140万円 |
| 20代後半(25〜29歳) | 約350〜450万円 | 約574.6万円 | 約125万〜225万円 |
| 30代前半(30〜34歳) | 約430〜520万円 | 約731.4万円 | 約210万〜300万円 |
| 30代後半(35〜39歳) | 約500〜600万円 | 約812.5万円 | 約210万〜310万円 |
(※)ITエンジニア全体の平均は厚生労働省の調査、SESの年収相場は転職市場のデータをもとにしています。
なお、右側はITエンジニア全体の平均であり、SIerだけの数字ではありません。SESとSIerの年収差を直接示すものではなく、あくまで比較の目安として見る必要があります。
それでも、年代が上がるほど差が広がる傾向は明確です。20代前半では100万円前後にとどまりますが、30代に入ると200万円を超える水準になります。
この差が生まれる理由のひとつが、経験に応じて任される仕事の違いです。SESでは同じ工程を担当し続けると、スキルや経験が増えても案件単価が大きく上がらないことがあります。一方、経験を積むにつれて設計、顧客折衝、プロジェクト管理など役割が広がる環境では、それに応じて給与が上がります。
年収を大きく左右するのは担当工程
年収差を見るうえで、所属企業以上に注目したいのが担当工程です。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査では、ITエンジニア関連の職種が複数の区分に分けられており、推計年収は次のとおりです。
| 職種区分 | 推計年収 | 含まれる主な職種 |
|---|---|---|
| ソフトウェア作成者 | 約578.5万円 | プログラマー、Web開発者、アプリ開発者 |
| その他の情報処理・通信技術者 | 約623.5万円 | ネットワークエンジニア、インフラエンジニア |
| システムコンサルタント・設計者 | 約889.0万円 | システムエンジニア、アーキテクト、PM |
最も低い「ソフトウェア作成者」と最も高い「システムコンサルタント・設計者」では、約310万円の差があります。所属企業の違いだけでなく、どの工程・役割を担っているかが年収に大きく影響することがわかります。
ただし、889万円という数字をそのまま上流工程の相場と考えるのは適切ではありません。この区分にはプロジェクトマネージャーやITコンサルタントなど、経験年数の長い職種も含まれており、平均年齢も高くなっています。SIerに転職すればすぐに届く水準ではありません。
反対に、SESでも上流工程やPLを担当すれば、年収600万円台を狙えるケースがあります。SIerでも下請け案件で実装やテストを中心に担当していれば、年収が大きく上がらないこともあります。
つまり、「SESだから年収が低い」「SIerだから年収が高い」とは一概に言えません。
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SESの年収は「案件単価」と「還元率」で決まる
SESでは、案件単価と会社からの還元率が年収に大きく影響します。
案件単価とは、常駐先の企業が自社に支払う月額の金額です。そこから会社の取り分を差し引いた残りが、給与の原資になります。この配分の割合が還元率です。
案件単価 × 還元率 × 12ヶ月 = 給与の原資(年間)
たとえば、案件単価が月70万円の場合、還元率によって次のように変わります。
- 還元率40%:70万円 × 0.4 × 12ヶ月 = 336万円
- 還元率60%:70万円 × 0.6 × 12ヶ月 = 504万円
同じ70万円の案件でも、還元率が40%と60%では年間168万円の差になります。
ただし、この金額がそのまま年収になるわけではありません。還元率の定義は会社によって異なり、社会保険料の会社負担分や交通費、研修費などを差し引く前の数字を提示している企業もあります。その場合、上記の504万円から会社負担分が引かれ、実際の年収はさらに下がります。
さらに、案件単価そのものも商流の影響を受けます。元請け企業が100万円で受注した案件でも、2次請け、3次請けと企業が間に入れば、その分だけ下位企業が受け取れる金額は小さくなります。
転職時は、還元率の数字だけを見るのではなく、次の3点をあわせて確認してください。
- 還元率は何を差し引いたあとの割合か
- 案件単価は本人に開示されるか
- 待機期間中の給与はどう扱われるか
SESで働くメリットとデメリット
SESには、未経験から実務経験を積みやすく、複数の現場を経験できるメリットがあります。一方で、配属先によって仕事内容が変わるため、経験の積み方を自分でコントロールしにくい面もあります。
とくに20代でSESを選ぶ場合は、目の前の案件だけでなく、数年後にどんな経験を身につけられるかまで考えておくことが重要です。
- 未経験から実務経験を積みやすい
- 複数の現場を経験できる
- 常駐先での評価が自社に伝わりにくい
- 同じ工程を担当し続けることがある
未経験でも実務経験を積む入口になる
SES企業には、未経験者を採用し、研修後に現場へ配属する会社が多くあります。最初はテストや運用保守など、経験の浅いエンジニアでも担当しやすい案件から始めるケースが一般的です。
未経験からエンジニアを目指す人にとって、早い段階で実務に触れられることは大きなメリットでしょう。転職市場では「実務経験○年以上」を応募条件とする求人も多く、独学やスクールでの学習だけでは選択肢が限られるためです。
現場では、チケット管理やコードレビュー、リリース手順、障害対応など、独学では触れにくい業務を経験できます。最初の1〜2年で積んだ実務経験は、その後の転職先を広げる土台になるでしょう。
ただし、配属される案件によって、身につくスキルや担当できる工程は異なります。将来担当したい工程や技術をあらかじめ整理し、キャリアにつながる案件を選ぶ意識が大切です。
複数の現場を経験して環境適応力がつく
SESでは、案件の契約期間や更新状況によって勤務先が変わることがあります。複数の現場を経験すれば、異なる開発環境や業務ルールに適応する力を身につけられます。
金融、製造、公共など複数の業界に関われることも、SESならではの経験です。1社に長く在籍している場合と比べて、さまざまなシステムや開発体制を知る機会を得やすいでしょう。
ただし、現場を経験した数が、そのまま市場価値になるわけではありません。「5社経験しました」と並べるだけでは、どのようなスキルを身につけたのかが伝わりにくくなります。
職務経歴書では、担当した工程や役割、扱った技術、どのような課題を解決したのかまで整理しておきましょう。現場を選べる場合は、業界や技術のどちらかに軸を持たせると、キャリアにも一貫性が出やすくなります。
働きぶりが自社に伝わりにくい
SESでは、日々の仕事ぶりを見るのは常駐先の担当者ですが、評価や給与を決めるのは基本的に所属企業です。そのため、常駐先で高く評価されていても、その内容が自社の評価に十分伝わらないことがあります。
とくに、常駐先から直接評価される機会が少ない企業では、自分の成果を会社に伝えることが重要です。
たとえば、担当した機能、業務改善の内容、工数を削減した実績、常駐先から受けた評価などを記録しておけば、評価面談だけでなく、次の転職でも実績として使えます。
入社前には、次の点を確認しておくとよいでしょう。
- 自社との面談やキャリア面談はどのくらいの頻度であるか
- 常駐先からの評価を自社の評価に反映する仕組みがあるか
- 営業担当や上司が現場の状況をどのように把握しているか
担当する工程が固定されやすい
SESでは、会社が保有する案件や本人の経験によって配属先が決まるため、希望する工程を必ず担当できるとは限りません。
とくに、同じ案件が長く続く場合は、テストや運用保守など特定の工程を担当し続けることもあります。商流の下側に位置する企業ほど、上位企業が要件定義や設計を担い、実装やテストが割り振られる構造になりやすいためです。
問題なのは、担当できる工程が増えないまま年数だけが経ってしまうことです。転職では、どのシステムに関わったかだけでなく、どの工程を担当し、どこまでの役割を担ったかが評価されます。
そのため、次のような方法で経験の幅を広げることを考えてみましょう。
- 案件を選べる制度がある企業を選ぶ
- 契約更新のタイミングで担当範囲の変更を相談する
- 現場で設計レビューや要件確認など、上流の業務に参加する
実装を担当している場合でも、仕様の確認や設計レビューに参加できれば、担当できる業務の幅を広げられます。こうした経験を積み重ねることが、次の転職で上流工程やPLなどを目指す際の材料になります。
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SESを辞めたい人向けに、辞める手順と注意点、キャリアパスを解説
SIerで働くメリットとデメリット
SIerには、SESと比べて給与や担当する業務の範囲が異なる場合があります。一方で、SIerに転職すれば必ず上流工程を経験できるわけではありません。企業の立ち位置や配属される案件によって、仕事内容は大きく変わります。
SESからの転職を検討する場合は、次の4点を比較しておきましょう。
- 経験や役割に応じた給与体系が整っている企業が多い
- 上流工程や大規模プロジェクトを経験できる機会がある
- 顧客折衝や進捗管理など、調整業務が増えやすい
- 下請けとして参画する場合は、担当工程が限定されることがある
待遇が安定して昇給の見通しが立ちやすい
SIerでは、給与が個別案件の単価に直接連動するのではなく、自社の給与テーブルや評価制度に沿って決まる企業が多くあります。等級や役職に応じて給与レンジが設定されているため、経験を積んだ後の年収をある程度見通しやすいのが特徴です。
また、規模の大きい企業では、資格取得支援や階層別研修、外部研修など、教育や福利厚生が整っている場合もあります。
案件単価がそのまま給与に反映されにくい分、収入が安定しやすい一方、短期間で大幅に年収を上げるのは難しい傾向があります。成果を出しても、基本的には昇格や評価制度に沿って給与が上がるためです。
そのため、安定して経験と年収を積み上げたい人には向いていますが、実力に応じて早く年収を上げたい場合は、給与テーブルや昇格条件まで確認しておきましょう。
上流工程や大規模案件に関われる
元請けの立場で受注する案件では、要件定義から運用保守までを一貫して担当します。顧客の業務課題を整理し、システムの全体像を設計する工程に関わる機会があります。
数十人から数百人規模のプロジェクトを経験できる点も特徴です。大規模案件の経験は、プロジェクト管理や品質管理の手法を実務で身につける機会になります。この経験は職務経歴書に規模として記載でき、転職市場でも評価されやすい要素です。
ただし、若手がすぐに上流工程を任されるわけではありません。入社から数年の社員に割り振られるのは、進捗管理や課題管理が中心になるケースが一般的です。上流工程に関われる会社にいることと、自分が担当することは分けて考えてください。
面接では、上流工程の有無ではなく、入社後3年でどの工程まで任される見込みかを確認しておくと判断材料になります。
調整業務が増えて手を動かす時間が減る
上流工程を担当するようになると、顧客や社内の関係部署、協力会社との調整が増えていきます。仕様の確認や進捗報告、課題の整理、見積もりの確認など、システムを作るための調整業務に多くの時間を使うこともあります。
また、元請けのSIerでは、実装を協力会社に任せる体制も珍しくありません。そのため、経験を積んで上流工程やプロジェクト管理を担当するほど、自分でコードを書く時間が減っていくことがあります。
これはデメリットとは限りません。顧客の要望を整理し、関係者と合意を取りながらプロジェクトを進める経験は、将来的にPMやITコンサルタントを目指すうえで重要なスキルになります。
一方で、技術を深く追求したい人にとっては、想定していた働き方と異なる可能性があります。転職前には、次の点を確認しておきましょう。
- 自社のエンジニアが実装を担当する割合
- 技術選定やアーキテクチャ設計に開発担当者が関われるか
- 技術を専門とするキャリアコースが用意されているか
下請けの立場だと担当工程が限定される
SIerと呼ばれる企業でも、すべての案件を元請けとして受注しているわけではありません。2次請けや3次請けとして案件に参加する場合、上位企業が要件定義や設計を担当し、自社は実装やテストなど一部の工程を担当することもあります。
この場合、SIerに転職したからといって、SESから自動的に上流工程へ移れるわけではありません。どの企業に所属するかだけでなく、どの商流の案件に、どの立場で参加するかが重要です。
求人を見るときは、次の点を確認すると実態を把握しやすくなります。
- 主要取引先にエンドユーザー企業が多いか、IT企業が多いか
- 受託開発を中心としているか、SES・技術者派遣を中心としているか
- 自社開発拠点で働く案件と客先常駐の案件がどの程度あるか
客先常駐が多い場合は、さらに請負・準委任のどちらが中心なのか、何次請けの案件が多いのかまで確認しておきましょう。
SIerという業態だけで判断するのではなく、実際の案件や商流まで見ることが、転職後のミスマッチを防ぐポイントです。
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SESとSIerのどちらが向いているかの判断基準
ここまで見てきたように、SESとSIerにはそれぞれ異なる特徴があります。ただし、「SESだからよい」「SIerだからよい」と一概には決められません。重要なのは、現在の経験や目指すキャリアに合った環境を選ぶことです。
判断するときは、次の4つを基準にすると整理しやすくなります。
- 未経験なら、まず実務経験を積める環境かを見る
- 上流工程を目指すなら、実際に担当できる工程を確認する
- 安定した収入を重視するなら、給与や評価の仕組みを見る
- まだ方向性が決まっていないなら、経験の幅を広げられる環境を選ぶ
未経験から早く現場に入りたい場合
実務経験が1年未満、またはIT業界自体が未経験の場合は、応募できる求人が限られることがあります。とくにSIerの中途採用では、一定の実務経験を応募条件としている求人も少なくありません。
そのため、まず実務経験を積むことを優先するなら、未経験者向けの採用枠があるSESは選択肢のひとつです。実務経験の年数は後から取り戻せないため、早い段階で現場経験を積むことには意味があります。
ただし、SESならどの会社でもよいわけではありません。最初の配属先によって、その後に身につく経験が大きく変わるからです。
入社前には、次の点を確認しておきましょう。
- 研修期間の長さと、研修中の給与
- 未経験入社者が最初に配属される案件の種類
- 配属後、最初の案件が何ヶ月程度で終わる想定か
研修が充実していても、配属後に電話対応や監視などの業務が長く続けば、開発エンジニアとしての経験にはつながりにくくなります。
研修の内容だけでなく、未経験者が実際にどんな案件に配属されているかを確認することが重要です。
上流工程やマネジメントを目指したい場合
要件定義や設計、プロジェクト管理に進みたい場合、判断軸は業態ではなく商流と工程です。
SIerの元請け案件であれば上流工程に関わる機会がありますが、下請けの立場では実装が中心になります。一方、SES企業でも元請けから直接受注していれば、要件定義の支援やPMO業務を担当することがあります。選ぶべきは、上流工程の案件を実際に保有している企業です。
見極めるための質問を挙げます。
- 元請け案件の比率はどの程度か
- 直近1年で、要件定義や基本設計を担当した20代社員はいるか
- 上流工程に移る際の社内の基準や手順は決まっているか
2つ目の質問に対して具体的な事例が返ってこない場合、制度としては存在しても運用されていない可能性があります。
収入と雇用の安定を優先したい場合
安定を重視するなら、給与がどう決まるかを確認してください。SIerでは自社の給与テーブルに基づいて決まるため、担当案件の単価に左右されません。等級ごとの昇給幅も定められており、数年先の見通しが立ちます。
SESでは、案件単価と還元率が年収に直結します。単価と給与が連動する仕組みがあるかどうかで、同じSES企業でも安定性は大きく変わります。
確認すべき項目は次のとおりです。
| 確認項目 | SIerの場合 | SESの場合 |
|---|---|---|
| 給与の決まり方 | 等級と評価に連動 | 単価と還元率に連動 |
| 確認したいこと | 等級ごとの給与レンジ、昇格の基準 | 還元率の水準と算出方法 |
| リスク要因 | 昇格しないと年収が動かない | 待機期間の扱い、単価の下落 |
SESの場合は、待機期間中の給与支給についても聞いておいてください。全額支給か減額かで、案件が途切れたときの影響が変わります。
幅広い現場を経験して適性を探りたい場合
やりたい分野が定まっていない段階であれば、経験の幅を優先する選択もあります。SESでは半年から2年ごとに現場が変わり、業務ドメインや技術スタックの異なる環境に触れられます。
金融の基幹システムと、Web系サービスの開発と、社内インフラの構築では、求められるスキルも働き方も異なります。実際に関わってみないと、自分がどこで力を発揮できるかは判断しにくいものです。
ただし、幅を広げる期間は決めておいてください。3年を超えて浅い関与が続くと、経歴に軸がないと見られる可能性があります。ここで言う浅い関与とは、どの現場でもテストの実行や監視業務にとどまり、設計や要件の検討に加わらないまま次の現場へ移る状態です。業界は変わっても担当工程が同じであれば、職務経歴書に書ける内容は増えません。
2〜3年で方向を定め、そこから専門性を積み上げる形が現実的です。案件選択制度がある企業を選べば、この戦略は取りやすくなります。制度の有無だけでなく、希望を出して通った実績があるかまで確認しておきましょう。
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SESとSIer以外の3つの選択肢
ITエンジニアの働き方は、SESとSIerだけではありません。誰のためにシステムを作るのか、開発した後もサービスに関わり続けるのかによって、仕事内容や身につく経験は変わります。
SESやSIerからの転職先としては、次の3つも選択肢になります。
- 自社開発企業は、自社サービスを継続的に改善する
- 社内SEは、自社の事業を支えるIT環境を担当する
- Web系受託開発企業は、顧客から依頼されたシステムを開発する
自社開発企業でプロダクトを長く育てる
自社開発企業は、自社で企画・運営するサービスを開発します。受託開発と違い、納品して終わりではなく、リリース後も継続して改善を重ねます。
働き方の面では、仕様を自社で決められる点が大きな違いです。技術選定にも開発側の意見が反映されやすく、モダンな技術スタックを採用している企業が多くなります。利用データを見ながら改善を回す経験は、受託や常駐では積みにくい部分です。
給与は、プロダクトの収益と評価制度に連動します。事業が伸びていれば還元されやすい一方、収益化前のフェーズでは水準が抑えられることもあります。
SESからの転職では、実務経験の中身が問われます。テストや運用のみの経歴では書類段階で通りにくく、設計や実装の経験、個人開発の成果物、GitHubでの活動といった補強材料が必要になります。
社内SEとして事業会社側でIT全般を担う
社内SEは、事業会社のIT部門に所属し、自社の情報システムを担当します。業務範囲は幅広く、基幹システムの導入・運用、社内ネットワークやセキュリティの管理、ベンダーとの折衝、ヘルプデスク対応などが含まれます。
顧客が社内の従業員であるため、納期に追われる度合いは受託開発より低い傾向にあります。残業時間が抑えられている企業も多く、働き方の安定を求める層に選ばれています。
一方で、自分で開発する機会は限られます。多くの企業では、システムの構築を外部ベンダーへ委託し、社内SEは要件の整理とベンダーの管理を担当します。手を動かし続けたい場合はミスマッチになります。
SESからの転職では、業務系システムの経験と、ベンダーとのやり取りを経験しているかが評価されます。常駐先で顧客側の担当者と直接調整した経験があれば、そのまま強みになります。
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Web系受託開発で成果物単位の開発を請け負う
Web系の受託開発企業は、クライアントから依頼を受けてWebサービスやアプリケーションを開発します。請負契約が中心で、成果物の完成に責任を負う点はSIerと同じです。
違いは案件の規模と期間です。数ヶ月単位のプロジェクトが多く、企画から設計、実装、リリースまでを少人数で担当します。1人が関わる工程の範囲が広く、開発の全体像をつかみやすい環境です。
技術面では、比較的新しいフレームワークやクラウドサービスを扱う機会が多くなります。案件ごとに技術が変わるため、キャッチアップの負荷は高めです。
ただし、受託である以上、納期の制約は受けます。クライアントの都合で仕様変更が発生すれば、その調整も担当範囲に入ります。この点はSIerと共通する部分です。
3つの選択肢を並べると、次のようになります。
| 選択肢 | 開発対象 | 主な働き方 | SESからの移りやすさ |
|---|---|---|---|
| 自社開発企業 | 自社サービス | 継続的な改善 | 設計・実装の実績が必要 |
| 社内SE | 自社の社内システム | 要件整理とベンダー管理 | 業務系と調整経験が活きる |
| Web系受託開発 | クライアントの案件 | 少人数で全工程を担当 | 開発経験と技術力が問われる |
いずれも、SESで積んだ経験の中身によって現実的な選択肢が変わります。テストや運用が中心の経歴であれば、まずは開発工程を担当できる環境に移り、そこから次を検討する順序が現実的です。
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求人票からSES企業を見分ける5つの視点
求人票だけでは、SESなのか受託開発なのかがわからない企業もあります。そもそも、SESという言葉を求人票に使わず、「システム開発」「ITエンジニア」とだけ記載している企業も少なくありません。
そのため、「SESかどうか」を判断するだけでなく、入社後にどこで、誰と、どのような仕事をするのかまで確認することが重要です。
求人票や企業サイトでは、次の5点を確認しておきましょう。
- 勤務地の記載から、客先常駐の有無を確認する
- 主要取引先から、案件の商流を推測する
- 還元率や給与制度から、収入の決まり方を確認する
- 平均勤続年数や離職率から、定着状況を確認する
- 面接で担当工程とアサインの決め方を確認する
勤務地がプロジェクトによると書かれていないか
求人票で最初に確認したいのが勤務地です。次のような記載があれば、客先やプロジェクト先で勤務する可能性が高いと考えられます。
- プロジェクト先による
- 東京23区内(案件により変動)
- 本社および客先
- 首都圏の各プロジェクト先
一方、自社での受託開発が中心であれば、本社や開発拠点など、勤務地が具体的に記載されているケースがあります。
ただし、客先常駐だからSESとは限りません。SIerでも顧客先に常駐してプロジェクトに参加することがあります。重要なのは、どこで働くかだけではなく、誰とどのような体制で働くかです。
面接では、次のような点を確認しておくと実態がわかりやすくなります。
- 自社の社員は同じプロジェクトに何人いるか
- 1人で常駐するケースがどの程度あるか
- チーム単位で案件に参画することが多いか
- 常駐先と自社のどちらが業務上の指示を出すのか
とくに1人常駐が多い企業では、困ったときに相談できる相手が現場にいないケースもあります。勤務地だけでなく、常駐時の体制まで確認することが大切です。
主要取引先に元請け企業が並んでいるか
企業サイトの会社概要には、主要取引先が記載されている場合があります。ここに何が並んでいるかで、商流上の位置がある程度推測できます。
| 記載されている取引先 | 推測できる位置 |
|---|---|
| メーカー、金融機関、官公庁などのエンドユーザー | 元請けまたは1次請け |
| 大手SIerや同業のIT企業 | 2次請け以降の可能性 |
| 記載なし、または「大手企業多数」等の抽象表現 | 判断材料が不足 |
3つ目のケースは珍しくありません。取引先を非公開にしている企業もあるため、記載がないことだけで判断はできません。
面接で聞くべきは、直請け案件と他社経由の案件の比率です。数字で答えられる企業と、明確な回答が返ってこない企業とでは、社内での案件管理の精度に差があります。
還元率を公開しているか
還元率は、案件単価のうちエンジニアに分配される割合です。近年は、この数字を求人票や採用サイトで公開する企業が増えています。
公開している企業を選ぶ利点は、給与の根拠が事前にわかる点にあります。単価70万円で還元率60%なら、月42万円が給与の原資になると計算できます。
ただし、数字だけで判断はできません。還元率の算出方法は企業ごとに異なり、社会保険の会社負担分や諸経費を差し引く前か後かで実際の手取りは変わります。
確認する際は、次の2点をあわせて聞いてください。
- 還元率は何を差し引いたあとの割合か
- 案件単価は本人に開示されるか
2つ目が非開示の場合、還元率が公開されていても自分の給与が妥当かを検算できません。
平均勤続年数と離職率が書かれているか
平均勤続年数は、求人票や有価証券報告書、就職四季報などで確認できます。IT業界全体の水準と比べて極端に短い場合は、理由を確認したほうがよいでしょう。
ただし、数字の読み方には注意が必要です。急成長中で採用を増やしている企業では、新入社員が多い分だけ平均勤続年数が短く出ます。設立年数が浅い企業も同様です。
設立年数と従業員数の推移をあわせて見ると、短さの理由が採用拡大によるものか、定着の問題かを切り分けられます。
面接で聞くなら、直接的な離職率よりも次の質問が答えを引き出しやすくなります。
- 3年前に入社した方は、現在どのようなポジションにいますか
- 直近で昇格した社員は、入社何年目の方が多いですか
該当する社員が在籍している企業であれば、具体的な事例が返ってきます。答えが曖昧な場合、その年次の社員が残っていない可能性もあります。
面接で担当工程と案件の決め方を確認する
書類だけで判断できる範囲には限りがあります。最終的な確認は面接でおこなってください。押さえておきたいのは3点です。
- 入社3年目の社員は、どの工程を担当していますか
- 案件のアサインは、どのような手順で決まりますか
- 希望と違う案件を提示された場合、断ることはできますか
1つ目の質問は、上流工程の有無を聞くより実態が見えます。会社として上流案件を持っていても、若手が担当していなければ意味がありません。
2つ目と3つ目は、キャリアの主導権がどちらにあるかを測る質問です。案件選択制度があると回答された場合は、制度の有無だけでなく、希望が通った実績と、断ったときの待機期間の給与の扱いまで確認してください。
これらの質問に具体的な回答が返ってくるかどうかが、求人票の文言よりも確かな判断材料になります。
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SES・SIerのキャリア相談ならテックゴー
ここまで見てきたように、SESかSIerかという区分だけでは、担当する工程や年収、身につく経験までは判断できません。重要なのは、どの商流で、どの契約形態の案件に入り、どこまでの工程を担当できるかです。
ただ、求人票だけではこうした情報がわからないこともあります。転職先を比較するときは、求人票に書かれている条件だけでなく、実際の案件やキャリアパスまで確認することが大切です。
エンジニア・ITコンサル領域に特化した転職エージェント「テックゴー」では、これまでの経験を整理したうえで、希望するキャリアに合った求人を提案しています。
- エンジニア・ITコンサル領域に特化し、上流工程の求人も多数保有
- 平均年収アップ金額138万円の転職実績
- 年収交渉の成功率100%で、企業との交渉をサポート
- 元エンジニア・ITコンサル出身のアドバイザーが多数在籍し、技術や工程を踏まえてキャリアを提案
- 面接対策は回数無制限で、選考に向けた準備をサポート
いまの経験でどこまで狙えるのか、次の転職でどの工程に進めるのかがわからない方は、まず現在の経歴を整理してみてください。経験してきた工程や商流を整理することで、次に選ぶべき求人も見えやすくなります。
テックゴーでは、こうしたキャリアの棚卸しから転職先の選定、面接対策、年収交渉まで一貫してサポートしています。
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エンジニアのキャリア相談はどこがいい?相談先4種の比較と失敗しない選び方
まとめ
SESとSIerの違いは、契約形態と企業の分類という異なる軸の話です。SESで一般的な準委任契約では指揮命令権が自社に残り、請負では成果物の完成に責任を負います。SIerはこれらと並ぶ契約形態ではなく、システム開発を担う企業を指す言葉です。
年収については、SESとSIerを直接比較できる公的データはありません。ただし、担当工程による差は約310万円と大きく、担当できる工程を決めているのは業態ではなく、商流上の位置と所属企業が保有する案件です。
判断すべきは、SESかSIerかではありません。いまの環境で担当工程を広げられるか、その見込みがあるかどうかです。見込みが薄いと感じたら、早い段階で環境を変えるほうが選択肢は多く残ります。
まずはテックゴーの無料相談で、いまの経歴が市場でどう評価されるかを確認してみましょう。
よくある質問
大手5大SIerとはどこですか?
一般的に、NTTデータ、野村総合研究所、大塚商会、伊藤忠テクノソリューションズ、SCSKの5社を指すことが多くなっています。ただし、明確な定義があるわけではなく、売上規模を基準にした呼び方です。集計する時期や基準によって顔ぶれは変わります。 なお、企業規模と担当できる工程は必ずしも一致しません。大手SIerでも、若手が最初から要件定義を任されるとは限りません。
客先から直接指示を受けるのは違法ですか?
準委任契約であるにもかかわらず、常駐先から直接業務指示を受けている状態は、労働者派遣に該当すると判断される可能性があります。この場合、労働者派遣法に抵触します。 ただし、違法かどうかを判断するのは労働局であり、実態に即して総合的に判断されます。業務の指示、勤怠管理、配置の決定を誰がおこなっているかが判断材料です。 責任を問われるのは企業であり、エンジニア個人ではありません。気になる場合は、都道府県労働局の需給調整事業部門に相談できます。
SESの還元率はどのくらいが目安ですか?
一般的なSES企業で40〜50%、条件のよい企業で55〜60%が目安です。65%を超える企業は限られます。 自分の還元率は、月収を案件単価で割れば概算が出せます。単価70万円で月収28万円なら約40%です。40%を下回っている場合は、スキルを磨くよりも所属を変えるほうが年収への効果は早く現れます。 なお、算出方法は企業ごとに異なります。何を差し引いたあとの割合かまで確認してください。
SESから自社開発企業に転職できますか?
可能です。ただし、実務経験の中身によって難易度が変わります。 設計や実装を担当した経験があれば、書類選考は通りやすくなります。一方、テストや運用のみの経歴では、個人開発の成果物やGitHubでの活動といった補強材料が必要です。 いきなり自社開発を目指すより、開発工程を担当できるSES企業や受託開発企業を経由する方法もあります。実務で設計・実装の経験を積んでから移るほうが、結果的に早いケースもあります。
新卒はSIerとSESのどちらを選ぶべきですか?
新卒であれば、SIerのほうが選択肢は広がりやすくなります。研修制度が整っており、配属後も自社の上司や先輩から指導を受けられる環境があるためです。 ただし、SIerでも下請けの立場であれば担当工程は限定されます。企業名や業態ではなく、元請け案件の比率と、若手がどの工程を担当しているかを確認してください。 SESを選ぶ場合は、案件選択制度の有無と、未経験入社者が最初に配属される案件の種類を事前に確認しておきましょう。
