エンジニアリングマネージャーとは?業務内容・年収・必要スキルを徹底解説
2026年04月23日更新
エンジニア組織の拡大・多様化が加速する中で、「エンジニアリングマネージャー」という役職への注目が高まっています。しかし、「EMとは具体的に何をする仕事なのか」「テックリードやPMとどう違うのか」「どうすればEMになれるのか」という問いに対して、明確な答えを持てていないエンジニアも多いのが現状です。
本記事では、エンジニアリングマネージャーの定義・業務内容・適性の特徴・年収相場・キャリアパスまでを体系的に解説します。
エンジニアリングマネージャーへの転向を検討しているひ人は、ぜひ参考にしてください。

著者
伊東 光雄
(Ito Mitsuo)
専門学校卒業後、約12 年間IT サービス事業会社にてシステム開発、インフラ運用管理、自社製品の新規開拓営業に従事。その後、2014 年に株式会社ワークポートに就業しキャリアアドバイザーとして転職相談にお越し頂く求職者に対し、キャリアに関する相談業務~求人企業のご紹介~内定・入社までのサポート及び、入社後のアフターフォロー業務全般に従事。
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監修者
五嶋 司
(Goto Tsukasa)
高校卒業後、公的機関にて実務経験を積んだのち、IT・Web・ゲーム業界特化の人材紹介会社Geeklyへ転身 。入社1年足らずでチームリーダーへ昇進し、計5度のMVPを受賞するなど、一貫して高い目標を達成し続けています 。
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目次
CONTENTS
エンジニアリングマネージャー(EM)の定義と役割
エンジニアリングマネージャー(EM)は、エンジニア組織の成果を最大化するために「人」と「技術」の両軸を担う管理職です。まずは、EMの基本的な定義と組織内での位置づけ、混同されやすい職種との違いを整理しておきましょう。
エンジニアリングマネージャー(EM)とは何か
エンジニアリングマネージャーは、ITエンジニアの採用・育成・評価といったピープルマネジメントと、技術選定やアーキテクチャ方針といったテクノロジー面でのマネジメントを同時に担う管理職です。単にチームを束ねるだけでなく、エンジニア組織全体のアウトプットを最大化する責任を持つポジションと位置づけられています。
近年、事業のデジタル化やSaaSプロダクトの拡大にともない、エンジニア組織の規模は急速に大きくなりました。専門領域も多様化しているため、技術と人・組織の両面から統括できる専任EMの需要が高まっています。「人と組織」と「技術」のハイブリッドな視点が求められる点で、一般的な管理職とは異なる職種といえるでしょう。
エンジニアリングマネージャー(EM)の組織における位置づけ
EMは、現場の開発メンバーやテックリードと、CTO・経営層との「中間レイヤー」に位置する役職です。現場の技術的な動きを理解しながら、経営層の意思決定を翻訳して伝える橋渡し役として機能するため、組織内でのコミュニケーションハブともいえるでしょう。
企業タイプによって権限範囲は異なります。SaaS系スタートアップやメガベンチャーでは1チーム10名前後を管掌する専任EMが一般的であり、大手SIerでは部長職に近い規模感で扱われるケースもあります。以前はテックリードやCTOがEM業務を兼任することが多かったものの、組織拡大の過程で意思決定や1on1の負荷が限界を超えるため、EM専任化が進んでいるのが現状です。
テックリードやPMとの違い
EMは、テックリードやプロジェクトマネージャー(PM)と業務範囲が重なる部分があるものの、責任範囲の軸が明確に異なります。テックリードが「技術」軸、PMが「プロジェクト」軸であるのに対し、EMは「人・技術・組織」を横断する点が特徴です。
テックリードはコード品質やアーキテクチャ設計など技術面に特化してチームを導く存在であり、自らも実装をリードします。一方、PMは納期・スコープ・コストといったプロジェクト管理を主担当とする役職です。
EMはこの両者と連携しながら、エンジニアの成長と技術品質の維持に責任を持つ立場にあります。企業によっては1人がEMとテックリードを兼任するケースもありますが、役割として分離されている組織では責任範囲が明確に区別されている点を押さえておきましょう。
| 項目 | EM | テックリード | PM |
|---|---|---|---|
| 主な責任範囲 | 人・技術・組織 | 技術・コード品質 | 納期・スコープ・コスト |
| 実装への関与 | 限定的 | 主体的にリード | 基本的に関与しない |
| 採用・評価 | 主担当 | 補助的に関与 | 関与しない |
| 経営層との接点 | 多い | 少ない | 中程度(顧客・事業側が中心) |
| 求められるスキル | ピープル・技術・事業視点 | 技術力・設計力 | 進行管理・調整力 |
エンジニアリングマネージャー(EM)の業務内容
EMの業務は多岐にわたりますが、代表的なものは「ピープル」「テクノロジー」「プロジェクト」「経営との橋渡し」の4領域に整理できます。ここからは、それぞれの領域で具体的にどのような業務をおこなうかを見ていきましょう。
採用や育成などのピープルマネジメント
EMにとってピープルマネジメントは中心的な業務のひとつです。具体的には、採用要件の定義から面接・オファー検討までの採用プロセス全般への関与、1on1・目標設定・評価・フィードバックを通じたメンバー成長支援、そしてチームの心理的安全性を高める環境づくりが含まれます。
重要なのは、EMの成果がメンバー個々の活躍を通じて表れる点です。採用段階で適切な人材を確保し、入社後は一人ひとりの強み・志向に合わせてキャリア支援をおこなう。
この積み重ねがチーム全体のパフォーマンスを押し上げ、組織としての成果につながります。EMは、メンバーが能力を最大限発揮できる土台を整える役割を担っているのです。
技術選定などのテクノロジーマネジメント
EMは、技術スタックの選定やアーキテクチャ方針といった技術的な意思決定に責任を持ちます。単に現場の判断に任せるのではなく、将来の拡張性や運用コストを見据えた方針を示す立場です。技術的負債の評価と解消計画の立案、開発生産性の計測と継続的な改善推進も重要な業務に含まれます。
加えて、新技術導入の判断や、テックブログ・カンファレンス登壇などを通じた対外的な技術ブランディングへの関与も求められます。
技術力を外部に発信することは、採用市場での企業ブランド形成にもつながるため、EMが積極的にコミットする領域といえるでしょう。組織の技術的な方向性を言語化し、社内外に届ける視点が欠かせません。
プロジェクト推進
EMはプロジェクト推進の責任者ではないものの、開発プロセスの設計・運用・改善には深く関わります。スクラムやカンバンといった開発手法の選定、チーム単位での運用ルール策定、レトロスペクティブを通じた継続的改善の推進などが代表的な業務です。スケジュール・リソース・リスク管理の場面でも、技術的な観点からの判断を求められます。
また、プロダクトマネージャーや事業側と連携しながら、開発チームのアウトプットを最大化する動き方も欠かせません。「事業側がほしい機能」と「技術的に妥当な実現方法」のあいだに橋を架け、現実的なスコープに落とし込む調整役として機能します。
PMがプロジェクト全体の進行を担う場面でも、EMは技術面・組織面のバックアップ役として動くことが多いでしょう。
経営層と開発現場の橋渡し
EMには、経営層と開発現場の「翻訳者」としての役割も期待されます。経営層・事業部門の要求を技術的実現可能性に翻訳して開発チームへ伝える一方で、現場の技術的負債・リソース不足・改善要望を経営層へ言語化して届ける動きは、組織が拡大するほど重要です。
「事業成長のスピードと技術品質のバランスをどう保つか」は、EMが日々向き合うテーマです。短期的に機能追加を優先しすぎれば技術的負債が蓄積し、逆に品質を追求しすぎれば事業スピードが鈍化します。
両者のトレードオフを現場と経営層の双方に丁寧に説明し、納得感のある判断を導く調整役が、EMに求められる役割といえるでしょう。
エンジニアリングマネージャー(EM)に適性がある人の特徴4つ
EMは誰もが向いている職種ではありません。技術力だけでなく、志向性や価値観が適性を左右する点が特徴です。ここでは、EMとして活躍しやすい人に共通する4つの特徴を紹介します。
1.メンバーの成長を自分の成果として感じられる人
EMになると、自分がコードを書く時間は減ります。そのかわりに、チームメンバーが成長し活躍する姿を自分の成果として捉えられるかが重要な適性基準です。EMとして評価されるのは個人の技術的アウトプットではなく、チーム全体のアウトプットだという点を理解しておく必要があります。
エンジニアとして技術を磨いてきた人ほど、自らが手を動かせない状況に苛立ちを感じるケースがあります。メンバーが活躍する姿を「自分の成果」として喜べない場合、EM業務は精神的な苦痛になりやすい傾向があるでしょう。
転向を検討する際は、「誰かの成長に貢献すること自体が自分のモチベーションになるか」を冷静に見つめ直すことをおすすめします。
MyVision編集部では、年収だけを基準にEMへの転向を判断することは推奨していません。実際に、EM転向後に「手を動かしたい欲求」と「マネジメント業務」のギャップに悩み、早期にプレイヤーへ戻るケースがあるためです。
年収の変化だけでなく、「自分が成果と感じる対象」が何かを合わせて考慮することで、より納得のいくキャリア選択につながりやすくなります。
2.技術的負債と事業スピードのバランスを取れる判断力
EMには、完璧な技術設計を追い求めるあまり事業スピードを落とすのではなく、現実的なトレードオフを判断できる能力が求められます。「正しい技術的判断」と「事業として必要な判断」が相反する場面では、両者の折り合いをつけるEMの意思決定が、組織の競争力を左右することもあるでしょう。
ここで問われるのは「先読み」の判断力です。
短期的な技術的妥協が数年後に致命的な負債となる可能性を見越しつつ、いま解消すべき範囲とあえて受け入れる範囲を明確に区別するなど、技術的な厳密さと事業的な現実を両方の視点から捉えることが、EMの質を決める要素です。
3.「わからない」と素直にいえる謙虚さと学習意欲
EMはすべての技術分野の専門家である必要はありません。自分が知らない領域についてはメンバーに頼り、彼らの知見を引き出しながら意思決定できる謙虚さこそ重要です。「わからない」と率直に認められる態度が、心理的安全性の高いチーム文化をつくる起点になります。
マネージャーが万能である必要はないと知ることは、メンバーからの信頼構築にも直結します。
知らない領域でも素直に学び続ける姿勢を見せれば、メンバーも「わからない」を口にできるようになり、結果としてチーム全体の学習スピードが加速するでしょう。自分の弱さを開示できる人ほど、EMとして長く活躍しやすい傾向があります。
4.最新の知識を学び続けようとする意欲
AI・クラウド・DevOpsといった技術トレンドの変化が速い現代において、EMが技術的文脈を理解し続ける重要性は増す一方です。マネジメントに専念するあまり技術から遠ざかりすぎると、現場との乖離が生まれ、意思決定の質が落ちるリスクがあります。
書籍・カンファレンス・技術ブログなどを通じた継続的なインプット習慣は、EMとしての判断の質を高めるうえで欠かせません。
コードを書く時間は減っても、技術の「今」を追い続ける努力を怠らない人が、メンバーから信頼され続けるEMです。技術への興味を失わずに学び続けられる人こそ、EMというキャリアに適しているといえるでしょう。
エンジニアリングマネージャー(EM)の年収相場
EMはマネジメント職のなかでも年収水準が高い職種のひとつです。
ここでは、複数の公開データをもとに平均年収と、企業タイプ別の年収目安を整理します。
エンジニアリングマネージャー(EM)の平均年収
エンジニアリングマネージャーの年収は高水準で、公開求人ベースではおおむね700万〜1,500万円前後が中心です。
JAC Recruitmentでは一般的な相場を700万〜1,500万円程度、最多帯を1,000万円前後、同社取扱求人の集中帯を900万〜1,200万円としています。
外資系・スタートアップ・大手日系企業での年収目安を比較
同じEMでも、企業タイプによって年収水準は明確に異なります。外資系・スタートアップ・大手日系企業それぞれの特徴を押さえることで、自分のキャリア志向に合った転職先を絞り込みやすくなるでしょう。
外資系IT企業では水準が高く、EMに転職した人の平均年収は1,100万円前後、最高年収は2,600万円程度というデータがあります。スタートアップ・メガベンチャーは800〜1,200万円台が中心で、ストックオプションや成果連動型インセンティブが加わるケースも一般的です。
大手日系SIer・メーカーは600〜900万円台が中心で、年功序列型の評価制度により昇給スピードは緩やかな傾向が見られます。
参考:JAC Recruitment 『外資系企業の年収ガイド|平均・年代別・役職別年収を解説』
| 企業タイプ | 年収レンジの目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 外資系IT企業 | 1,100万円〜2,600万円 | 成果主義で上限が高い |
| スタートアップ・メガベンチャー | 800万円〜1,200万円台 | ストックオプション・インセンティブあり |
| 大手日系SIer・メーカー | 600万円〜900万円台 | 安定性が高く年功序列型 |
エンジニアリングマネージャー(EM)へのキャリアパス
EMはゴールではなく通過点にもなり得るポジションです。EMになるまでのステップと、EMとして活躍したあとに広がるキャリアの方向性を見ていきましょう。
エンジニア・テックリードからEMになるためのステップ
EMに至るキャリアパスは、「エンジニア→テックリード→EM候補→EM」という段階的なルートが一般的です。いきなりEMに転向するのではなく、1on1・採用面接補助・目標設定支援といった「マネジメントの一部を担う経験」を先に積んでおくことが、EM昇格の確度を高めます。
テックリードとEMを兼任しながらマネジメントスキルを証明していくルートも多く見られます。現職の中でマネジメント機会を獲得できない場合は、EM候補ポジションでの転職が現実的な選択肢です。
JACによると、一般的には最低5年以上のエンジニア経験に加え、チームリーダーやプロジェクトリーダーなど何らかのマネジメント経験が求められるため、自分の経験を棚卸ししたうえで選考準備を進めましょう。
例として、現職で3〜5年の開発経験を持つテックリードがEM候補ポジションへ転職した場合、想定されるキャリアパターンは以下のとおりです。
- パターンA:EM候補として入社→1年以内に専任EMへ昇格→3〜5年後にVPoE・CTOへ
- パターンB:EM候補として入社→テックリード兼任EMとして技術と組織の両軸で実績を積む→プロダクト責任者や事業責任者へ横展開
- パターンC:EMとして複数チームを管掌→部長級・VPoEへ→経営層(CTO)へ
パターンAをたどる場合、技術戦略と組織戦略の両方に関与する経験が、VPoEやCTOといった経営寄りポジションへの接続点になります。いずれのパターンでも、自分が「技術で深める」のか「人と組織で広げる」のかを早い段階で見極めておくと、キャリアの選択がスムーズです。
エンジニアリングマネージャーへの転向相談はテックゴーへ
EMへの転向は、求人票の条件だけを見て判断するには情報量が不足しがちなキャリア選択です。同じ「EM」という肩書きでも、管掌人数・技術スタック・開発スタイル・権限範囲は企業によって大きく異なり、数年後のキャリアの広がり方にも影響します。
テックゴーでは、EM・EM候補ポジションへの転職を検討している人に対し、スキルや志向に応じた求人提案と、将来の市場価値向上につながる環境選びの支援をおこなっています。
「テックリードから一歩踏み出したい」「年収を上げつつマネジメント経験を積みたい」といった相談にも対応していますので、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
エンジニアリングマネージャーは、技術とマネジメントの両軸を担う希少なポジションです。組織の拡大・多様化を背景に専任EMの需要は高まり続けており、シニアエンジニアやテックリードにとって、年収・影響範囲の両面で魅力的な選択肢です。
一方で、「自分の成果の定義」がプレイヤー時代とは変わるため、適性の見極めは欠かせません。
転職先を選ぶ際は、年収レンジだけでなく「管掌するチームの規模」「権限の範囲」「EMとして経験できる領域」を軸に比較することをおすすめします。自分のキャリアの先に何を描くか、一度棚卸ししたうえで、情報収集をはじめてみてはいかがでしょうか。
【FAQ】エンジニアリングマネージャー(EM)に関するよくある質問
こちらでは、エンジニアリングマネージャーに関するよくある質問にお答えします。
Q1. エンジニアリングマネージャー(EM)になるとコードを書く機会はなくなりますか?
完全にゼロにはならないものの、業務の中心ではなくなるのが一般的です。企業やチーム規模により差はありますが、EMは1on1・採用・評価・技術戦略の策定などに時間を割くため、日常的にプロダクトコードを書く時間は限定的になります。
ただし、技術感覚を保つためにプロトタイプ開発やコードレビュー、技術検証などを継続するEMも多いとされています。「手を動かし続けたい」という志向が強い人は、テックリード兼任型のEMポジションを選ぶという選択肢もあります。
Q2. マネジメント未経験からエンジニアリングマネージャー(EM)に転職することは可能ですか?
完全未経験からの転職は難易度が高いものの、「EM候補」ポジションであれば現実的な選択肢です。スタートアップやメガベンチャーでは、将来的にEMとして活躍が期待できる人材を候補枠で採用し、入社後半年〜1年程度のあいだにマネジメント適性を見極めるケースが一般的に見られます。
応募にあたっては、最低5年程度のエンジニア経験に加え、チームリーダー・プロジェクトリーダー・新人メンター・採用面接補助といった「マネジメントの一部を担った経験」を整理しておくと、選考で評価されやすくなります。
Q3.エンジニアリングマネージャー(EM)にはどれくらいの技術力が必要ですか?
全領域の専門家である必要はないものの、チームが扱う技術スタックの全体像を理解し、技術的な議論に参加できるレベルは求められます。アーキテクチャ選定や技術的負債の評価といった意思決定に関与するため、表面的な理解だけでは判断の質が担保できないためです。
目安としては、シニアエンジニア〜テックリード相当の技術バックグラウンドがあると、現場メンバーからの信頼を得やすくなります。EM転向後も、カンファレンスや技術ブログなどを通じた継続的なインプットで技術感覚を保ち続ける姿勢が、長く活躍するうえでの鍵といえるでしょう。
