「このままで大丈夫かな」と不安を感じたエンジニアの話
2026年07月30日更新
日々のキャリア相談では、同じような不安の声を、実にたくさん耳にします。技術のキャッチアップがつらい、同世代と比べて焦ってしまう、この先のキャリアが見えない、といった声です。
この記事では、エンジニア特化の転職エージェント「テックゴー」の編集部が、そうした声をひとりのエンジニアの物語として編み直し、お届けします。
皆さんは、「このままで大丈夫かな」と、ふと思ったことはありませんか?次の日になれば忘れているつもりが、気づけばまた同じ言葉が頭の隅に立っている。そういう方は、思っているより多いのだと思います。
目次
CONTENTS
「このままで大丈夫だろうか」と不安を感じるようになった
Aさんは、受託開発の会社に所属するエンジニアです。年齢は29歳で、常駐先のシステム開発チームに所属し、バックエンドの実装とテストを中心に担当しています。実務経験は5年目に入ったところでした。
チームの人数は10名ほどで、要件定義や設計は上流の担当者が受け持ち、Aさんのような立場のメンバーには、実装から先の工程が任されることが多かったそうです。
実務5年目、今の仕事にはそれなりに慣れてきていた
Aさんは、今年で実務5年目を迎えていました。新人の頃のように、右も左もわからないということはもうありません。任された案件はひととおりこなせますし、コードレビューで指摘を受けても、以前ほど落ち込むことはなくなっていました。振り返ってみると、大きくつまずくこともなく、それなりに順調にやってきたそうです。
同期と比べても、遅れをとっているという実感はなかったといいます。むしろ、自分なりのペースで、着実に力をつけてきた自負もありました。だからこそ、あの感覚がやってきたとき、最初は戸惑ったそうです。
クラウドや生成AIまわりの会議についていけなくなった
最初にそう感じたのは、クラウド移行の方針を話し合う会議でした。マネージドサービスをどう組み合わせるか、コスト最適化をどう図るか、議論のテンポがはやく、Aさんは半分もついていけなかったといいます。生成AIを開発フローに組み込む相談でも、同じことが起きました。
周囲は当たり前のように新しいツールの名前を挙げ、その場で使い方まで検討していきます。Aさんはとりあえずうなずきながら、あとで検索して追いつく、ということを何度も繰り返していたそうです。
わからないことがあるとき、その場で聞けばいいというのはわかっていました。ただ、実務5年目にもなって「それ、何ですか」とは、なかなか言い出せなかったといいます。聞かなければ置いていかれるとわかっていながら、聞けない自分に、余計にいらだつこともあったそうです。
Xで見た同世代の年収に、頭を殴られたような気がした
追い打ちをかけたのは、Xで見かけた投稿でした。たまたま流れてきた投稿に、同い年くらいのエンジニアが、転職で年収を大きく上げた話を書いていたといいます。使っている技術も、任されている仕事の幅も、自分よりずっと先を行っているように見えました。
Xのアルゴリズムでは、興味を持った投稿に類似する投稿が自動でレコメンドされるようになります。その結果、Aさんのアカウントには次から次へと似たような投稿が流れてくるようになりました。
誰かの昇進を知らせる投稿もあれば、誰かの独立を報告する投稿もあります。自分の生活は何も変わっていないのに、まわりだけがどんどん進んでいくような感覚に、じわじわと焦りが募っていったといいます。
周囲と自分を比べては、落ち込む日々が続いていた
同期の成果物と、自分の成果物を並べてみてしまった
チームには、Aさんと同じ年に入社した同期がひとりいました。担当領域は違ったものの、月次の振り返りミーティングで共有される成果は、どうしても目に入ってしまいます。
同期は新しい機能をいくつも任され、レビューでも大きな指摘を受けることなく淡々とこなしているように見えました。
Aさんは、自分の担当している改修案件と、その同期のリリース内容を、無意識のうちに何度も見比べていたそうです。比べたところで何かが変わるわけではないと、頭ではわかっていたといいます。
先輩たちが当たり前にこなしていることが、自分にはできなかった
同期だけではありません。チームの先輩たちが当たり前のようにこなしている作業も、Aさんにとっては簡単ではありませんでした。障害対応の場面で、先輩がログを見ただけで原因の見当をつけていく様子を、何度も目にしたそうです。
Aさんも同じログを見ているのに、そこから仮説を立てるまでに時間がかかりました。経験を重ねればいずれ追いつけるはずだと思う一方で、自分にはその先輩たちのような勘のようなものが備わっていないのではないか、という考えも頭をよぎったといいます。
似たような焦りを、別の誰かも抱えていた
実は、こうした感覚を口にするのは、Aさんだけではありません。
テックゴーはエンジニア特化の転職エージェントとして、数多くのエンジニアの方のキャリア相談にのっています。テックゴーに寄せられた相談の中には、社内SEとして働く30代の方が、同じように同僚との比較に苦しんでいた例もありました。
担当領域も会社の規模もAさんとはまったく違いますが、周囲と自分を並べては落ち込んでしまうという感覚そのものは、よく似ていたといいます。
自己嫌悪に陥り、一番つらかった時期があった
「なんで自分だけ」という言葉が、頭から離れなくなった
比較が続くうちに、Aさんの中では、原因をすべて自分に結びつける考え方が定着していきました。同期についていけないのも、先輩のようにログから仮説を立てられないのも、生成AIの話題についていけないのも、根っこはひとつ、自分の能力が足りていないからだと考えるようになっていったそうです。
「なんで自分だけできないのだろう」という言葉が、通勤中も、作業の合間も、頭から離れなくなっていったといいます。
一度そう考え始めると、うまくいっていることまで色あせて見えてきました。担当している改修案件が無事にリリースできても、それは当然のことのように感じられ、素直に喜べなかったそうです。
むしろ、次はもっと難しい課題が来て、そこで自分の限界が露呈するのではないかと、先回りして不安になっていたといいます。
眠れない夜が増え、仕事を辞めることも頭をよぎった
そうした状態が続くうちに、Aさんは夜、なかなか寝つけない日が増えていきました。布団に入ってからも、その日の会議で理解できなかったことや、同期の成果が頭の中で繰り返し再生され、気づけば深夜になっていたそうです。
翌朝は寝不足のまま出社し、集中力が続かず、それがまた自己嫌悪につながるという流れが、しばらく続いていたといいます。
このころには、辞めるという選択肢も、頭の片隅にちらつくようになっていました。ただし、辞めて何をしたいのかまでは、はっきりしていなかったそうです。辞めたい気持ちと、辞めたところで状況が変わるのだろうかという迷いが、同時にあったといいます。
振り返ってみると、不安の原因は一つではなかった
案件の振られ方など、環境によって機会が制限されていた面があった
一番つらかった時期を過ぎたころ、Aさんは少し落ち着いて、これまでのことを振り返ってみたそうです。すると、あの会議についていけなかったのは、能力の差だけが理由ではなかったことに気づいたといいます。
Aさんの所属するチームでは、クラウドの構成をどう組むか、生成AIをどう導入するかといった議論は、もともと上流の担当者が担っていました。Aさんに割り振られる作業は、その方針が決まったあとの実装とテストが中心だったそうです。
そもそも、その手の議論に日常的に触れる機会自体が、自分にはごくわずかしかなかったのだと、Aさんは気づいたといいます。
同期についても、あらためて話を聞いてみると、担当している案件でちょうどそうした設計判断に関わる機会があったことがわかりました。同期が優れていたというより、たまたま触れる機会があったかどうかの違いが大きかったのかもしれません。Aさんは、そのように考えるようになったそうです。
技術の移り変わりの速さは、自分だけの問題ではなかった
もうひとつ、Aさんが振り返って気づいたことがあります。先輩たちも、決して最初から今のレベルにいたわけではなかったという点です。
ログを見ただけで原因の見当をつけていた先輩に、あるとき何気なく聞いてみたところ、その先輩も、数年前は同じように苦労していたと打ち明けてくれたそうです。加えて、その先輩自身、今もキャッチアップに追われている技術がいくつもあると話していたといいます。
技術の移り変わりが速いということ自体は、Aさんひとりの問題ではなく、この仕事を続ける以上、誰もが向き合い続けなければならないことなのだと、Aさんはあらためて感じたそうです。
先輩との差は、キャッチアップが終わっているかどうかではなく、キャッチアップを続けてきた年数の差にすぎなかったのかもしれません。
それでも、学習量が足りていなかった部分は素直に認めざるを得なかった
一方で、すべてを環境や業界の構造のせいにはできないとも、Aさんは感じていたそうです。
振り返ってみると、業務時間の外で新しい技術に触れる時間は、正直なところ十分に取れていませんでした。気になる技術があっても、後回しにしたまま、手をつけられずにいたことも多かったといいます。
環境のせいにできない部分があると認めたことで、かえって何をすればいいのかが見えてきたと、Aさんは話していたそうです。能力そのものが足りないのではなく、学習にあてる時間を、意識して確保できていなかっただけかもしれません。そう思えたことが、次の行動につながっていったそうです。
誰かに相談してみようと思うようになった
最初は、社内の人には話しにくいと感じていた
環境と学習量、両方に原因があるとわかっても、Aさんはすぐに誰かに話す気にはなれなかったそうです。まず頭に浮かんだのは、チームのリーダーや、評価に関わるマネージャーでした。
ただ、日々の評価をつける相手に弱みを見せることには、抵抗があったといいます。この不安を口にした瞬間、実力不足だと思われるのではないかという恐れが、Aさんを黙らせていたそうです。
1on1の機会は定期的にあったものの、そこでは進捗の話に終始してしまい、こうした気持ちまでは踏み込めませんでした。Aさんは、しばらくのあいだ、誰にも話せないまま、ひとりで考え続けていたといいます。
一歩踏み出して、キャリアの相談ができる場所を探してみた
このままではいけないと思ったAさんは、業務時間の外で、キャリアの相談ができる場所をインターネットで探してみたそうです。転職を決めているわけではなかったため、最初は少し腰が引けていたといいます。ただ、話を聞いてもらうだけでもいい、という案内を見つけたことで、少し気持ちが軽くなったといいます。
転職するかどうかを決める前に、まず話してみればいいのだと思えたことが、Aさんにとって最初の一歩になったそうです。社内の誰かに話すよりも、利害関係のない第三者に話すほうが、かえって素直な気持ちを言葉にできるのではないかと、Aさんは考えたといいます。
話を聞いてもらう中で、見えてきたことがあった
Aさんが選んだのは、テックゴーというエンジニア特化のキャリア相談窓口でした。転職を前提にしていなかったこともあり、最初はどこまで話していいものか迷いながらの相談だったといいます。
自分の市場価値を、初めて客観的な言葉で聞いた
担当したキャリアアドバイザーは、Aさんが担当してきた案件の内容や、実装とテストを中心とした役割について詳しく聞いたうえで、今の経験年数とスキルであれば、市場でどのくらいの評価を受けられるかを、具体的な言葉で伝えてくれたそうです。
なんとなく不安に思っていたことが、初めて数字と言葉で説明されたことで、Aさんの中で少し整理がついたといいます。
これまで、自分の市場価値をどう調べればいいのかさえわかっていませんでした。求人票を眺めても、自分に当てはまるのかどうか判断がつかなかったそうです。今回、第三者に評価してもらったことで、はじめて自分の立ち位置を、外側から確認できたといいます。
「今の会社に残る」以外にも、選択肢はいくつもあった
相談の中では、転職以外の選択肢についても話が及んだそうです。今の会社の中で、設計や上流工程に関わる案件へ異動する道もあれば、技術力を伸ばせる環境に転職する道もあり、専門性を絞って強みをつくる道もあるという話でした。
Aさんにとっては、選べる道がひとつしかないと思い込んでいたことに気づいた瞬間だったといいます。
転職するかどうかという二択ではなく、いくつもの選択肢の中から選べばいいのだと知れたことが、気持ちを軽くしたそうです。焦って何かを決める必要はなく、まずは選択肢を知ることから始めればいいのだと、Aさんは感じたといいます。
不安の原因によって、取るべき対応が違うと分かった
相談の終盤では、Aさんが自分なりに整理していた不安の原因についても話したそうです。案件の振られ方という環境の面、技術の移り変わりという業界構造の面、そして学習量という自分の面、それぞれに応じて、取るべき対応は違うという話になったといいます。
環境の問題であれば異動や転職で変えられるし、業界構造の問題であれば向き合い方を変えればいいし、学習量の問題であれば今日からでも動き出せる、という整理は、Aさんにとって腑に落ちるものだったそうです。漠然としていた不安が、具体的な選択肢に変わっていった瞬間だったといいます。
できることから、小さく行動を始めてみた
相談を終えたAさんは、すぐに何かが変わったわけではなかったそうです。それでも、まずは自分にできる範囲で、小さな行動から始めてみることにしたといいます。
自分の得意・不得意を、紙に書き出してみた
最初にAさんが取り組んだのは、これまで担当してきた仕事を、紙に書き出してみることでした。実装やテスト、障害対応の場面では、人並み以上に手を動かせる自信があることに、あらためて気づいたそうです。
一方で、設計や技術選定のような、方針そのものを決める場面には、これまでほぼ関わってこなかったことも、同じ紙の上ではっきりしたといいます。
得意なことと苦手なことを、感覚ではなく文字にしてみたことで、次に何を伸ばせばいいのかが見えてきたと、Aさんは話していたそうです。漠然と焦っていたときには見えなかった輪郭が、書き出すことで少しずつはっきりしていったといいます。
学んだことを、短くてもいいから記録するようにした
次にAさんが始めたのは、その日調べたことや、わからなかったことを、短い言葉で記録することでした。長い文章を書く余裕はなかったため、1行だけのメモにとどめることも多かったそうです。それでも、数週間分をあとで読み返してみると、思っていた以上に多くのことを調べていたことに気づいたといいます。
成果として何かがすぐ形になったわけではありませんでしたが、確かに前に進んでいるという実感を、この記録が与えてくれたと、Aさんは振り返っていました。何もできていないという思い込みが、記録によって少しずつ崩れていったといいます。
完璧を目指すのをやめ、小さなアウトプットを重ねるようにした
以前のAさんは、わからないことがあっても、その場で聞けませんでした。ただ、少しずつ考え方を変え、完璧に理解してから発言しようとするのをやめてみたそうです。会議の中でわからない用語が出てきたときには、その場で短く聞いてみるようにしたといいます。
大きな成果を出そうとするより、小さく聞く、小さく試す、を積み重ねるほうが、結果として前に進めることに、Aさんは気づいたそうです。以前は黙ってうなずくだけだった会議でも、今では一言だけ質問を挟めるようになったといいます。
今、あらためて感じていること
不安が完全になくなったわけではない
相談から数ヶ月が経った今も、Aさんの不安が跡形もなく消えたわけではないそうです。新しい技術についての会議で、いまだについていけないと感じる瞬間はありますし、Xで同世代の投稿を見て、心がざわつくこともあるといいます。不安そのものをなくすことよりも、不安が来たときにどう受け止めるかが変わったのだと、Aさんは話していたそうです。
以前であれば、そのまま自己嫌悪に沈んでいたところを、今は一度立ち止まって、これは環境の話なのか、業界全体の話なのか、自分の学習の話なのかを、考えてみるようになったといいます。
それでも、前より少しだけ、前を向けている
大きな決断をしたわけでも、劇的に何かが変わったわけでもありません。それでも、以前より少しだけ、前を向けるようになったと、Aさんは感じているそうです。書き出したメモは今も少しずつ増えていますし、会議で質問する回数も、以前よりは増えたといいます。
この先どうなるかは、Aさん自身にもまだわからないそうです。ただ、わからないなりに、小さく動き続けることはできると、今は思えているといいます。
テックゴーではエンジニアのキャリアに関する無料相談をおこなっています
実際にAさんのモデルとなった相談は、転職を前提にしたものではありませんでした。ただ、自分の市場価値を知りたい、この不安の正体を誰かに話してみたい、という気持ちだけで、相談窓口を利用してくれたそうです。
テックゴーは、エンジニアの転職を支援するサービスですが、相談の入り口は、必ずしも転職の意思がある方だけに限っていません。今すぐ動くつもりがなくても、まずは話を聞いてもらうだけの利用も歓迎しています。
担当するアドバイザーには、元エンジニアや元ITコンサルタントも多く、現場で感じる不安を、ある程度共有した状態から話を始められるはずです。
もし、この記事で紹介した体験談のどこかに自分と重なる部分や不安を感じたなら、それだけで相談する理由としては十分です。無料のキャリア相談は、下記から申し込めます。
