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メーカー系SIerとは?企業や強み・デメリット・ユーザー系との違いなど解説

2026年10月08日更新

メーカー系SIerは、電機・通信などのメーカーを親会社に持ち、グループの製品・技術を前提にシステムを提供するSIerです。

「安定していそう」という印象で選ばれやすいですが、独立系・ユーザー系との違いを押さえないまま転職すると、入社後にギャップを感じかねません。どの顧客の案件を担当するのか(グループ内向けか、グループ外向けか)や、扱う技術、任される裁量の範囲が想定と異なるケースがあるためです。

この記事では、以下の内容を解説します。

  • メーカー系SIerとほかのSIerとの違い
  • 仕事内容と、分野ごとの代表的な企業
  • メーカー系SIerの年収と働き方
  • 入社前に知っておきたい強みと注意点
  • 転職を成功させるための準備の進め方

メーカー系SIerは「どの会社か」よりも「どの部門に配属されるか」で経験が大きく変わります。 メーカー系SIerへの転職を考えているエンジニアの方に、応募先を選ぶための判断材料をお伝えしているので、ぜひ参考にしてください。

目次

CONTENTS

メーカー系SIerとは?

メーカー系SIerは、親会社メーカーの製品・プラットフォームを軸に、企業のIT導入を支えるSIerです。

SIe(System Integrator)rとは、企業のシステムを要件定義から導入、運用まで一貫して支援する会社を指します。上流から運用までを一気通貫で担う点は、ほかの分類のSIerにも共通します。

ここでは、メーカー系SIerの定義と立ち位置、そして担っている役割を順に解説します。

メーカー系SIerは、電機メーカーや通信機器メーカーのグループに属するSIerです。親会社のサーバーやネットワーク機器、ミドルウェアを組み込み、顧客の業務システムを構築するのが主な仕事です。メーカー本体のSI部門と、その機能を切り出した子会社の両方が含まれます。

メーカー系SIerは、ユーザー系や独立系と並ぶSIerの分類のひとつです。商流のなかでは、顧客から直接案件を受注し、開発の一部を協力会社に委託する元請けの側に立つ傾向があります。ただし、親会社が受注した案件の開発を担当するグループ会社もあり、立ち位置は会社ごとに異なります。

なお、グループ内向けの案件を内販、グループ外の顧客向けの案件を外販と呼び、この比率が会社ごとの性格を大きく分けます。

メーカー系SIerは、親会社が開発した製品を、顧客の業務に合わせたシステムとして実装する役割を担います。製品の仕様を把握したうえで設計できるため、ハードウェアとソフトウェアをまとめて提案できる点が強みです。

また、メーカー系SIerの役割は、システムを導入した時点では終わりません。社会インフラや製造業向けのシステムは、長期にわたって運用されることが多い分野です。そのため、メーカー系SIerは導入後も運用保守を担当し、安定した稼働を支えます。

親会社から見ると、メーカー系SIerは製品と顧客の業務をつなぐ担い手です。開発から構築、運用保守までをグループのなかで引き受けられるため、メーカーは製品とサービスをあわせて顧客に提供できます。この体制をグループのなかで支えることに、メーカー系SIerの存在意義があります。

SIerとは?企業の分類や仕事内容・SEとの違いをわかりやすく解説

SIerとは?企業の分類や仕事内容・SEとの違いをわかりやすく解説

メーカー系SIerと他のSIerの違い

SIerは成り立ちによって、メーカー系のほかにユーザー系・独立系・外資系・コンサル系に分けられます。分類ごとの成り立ちと仕事内容の違いは、次のとおりです。

分類成り立ち主な仕事
メーカー系電機・通信機器メーカーのSI部門や子会社親会社の製品を組み込んだシステムの構築
ユーザー系事業会社の情報システム部門が分社親会社グループを中心とした業務システムの開発・運用保守
独立系親会社を持たない独立資本さまざまな業界の顧客に向けたシステムの設計・開発
外資系海外に本社を置くIT企業の日本法人本国の製品の導入やグローバル企業のシステム構築
コンサル系コンサルティング会社が母体経営課題の分析・IT戦略の立案からシステムの導入まで

SIerの成り立ちの違いは、主な顧客や製品の選び方の違いにもつながっています。見ていきましょう。

ユーザー系SIerは、銀行や通信会社、商社といった事業会社の情報システム部門が分社化してできたSIerです。メーカー系SIerの親会社がITを提供する側の企業であるのに対し、ユーザー系SIerの親会社はITを使う側の企業という違いがあります。

そのため、ユーザー系SIerの仕事は、親会社グループの業務を支えるシステムの開発や運用保守が中心です。親会社の業務に合わせてシステムを作るため、その業界の業務知識が深まりやすく、特定のメーカーの製品に縛られずに技術を選べる点も特徴です。

ユーザー系SIerとは?代表企業や強み・年収・内販外販の違いを解説

ユーザー系SIerとは?代表企業や強み・年収・内販外販の違いを解説

独立系SIerは、親会社を持たない独立資本のSIerです。親会社からの案件がないため、さまざまな業界の顧客から自社で案件を獲得します。

メーカー系SIerが元請けの立場に立つ傾向があるのに対し、独立系SIerの商流の位置は企業や案件によってさまざまです。顧客から直接受注する案件もあれば、ほかのSIerから開発を請け負う二次請けの案件もあります。また、特定のメーカーに縛られないため、顧客の要望に合わせて製品や技術を選べる点もメーカー系SIerとの違いです。

独立系SIerとは?大手企業や強み・年収・キャリアまで詳しく解説

独立系SIerとは?大手企業や強み・年収・キャリアまで詳しく解説

外資系SIerは、海外に本社を置くIT企業の日本法人です。本国の製品やサービスの導入に加え、グローバルに事業を展開する企業のシステム構築やコンサルティングも手がけます。上流工程に強い企業や、特定の製品やプラットフォームに特化した企業があります。

英語を使って海外拠点と連携する機会が多い点も、外資系SIerならではの特徴です。また、メーカー系SIerを含む国内のSIerと比べると、成果やスキルが評価に直結しやすい企業が多く見られます。

コンサル系SIerは、コンサルティング会社を母体とするSIerです。メーカーのSI部門や子会社から生まれたメーカー系SIerとは、成り立ちが異なります。

コンサル系SIerは、経営課題の分析やIT戦略の立案から案件に入り、その流れでシステムの導入まで手がけます。 近年は、コンサルティング会社がこうした形でシステムの導入まで手がける動きが広がりました。

メーカー系SIerの仕事内容

メーカー系SIerの仕事は、システムを作ることだけではありません。顧客と要件を固め、協力会社と体制を組み、運用までつなぐところまでを担います。仕事内容の特徴は、次の3つです。

  • 要件定義・基本設計といった上流工程を担当する
  • 製造・テストはパートナー企業に委託して管理する
  • 親会社向けと外部顧客向けで案件の中身が変わる

いずれも、元請けとして案件を受けることが多いメーカー系SIerならではの仕事の進め方です。

メーカー系SIerの社員は、要件定義や基本設計といった上流工程を担う場面が多いです。というのも、元請けとして顧客から直接案件を受けることが多く、顧客と要件を決める工程は自社で担うためです。

要件定義では、顧客の業務担当者から課題や要望を聞き取り、システムで何を実現するかを決めます。あわせて、処理性能や稼働率、セキュリティといった非機能要件も顧客と合意します。基本設計は、決めた要件をもとに、システム全体の構成や機能を設計書にまとめる工程です。構成を決める際は、親会社の製品を優先して組み合わせます。

エンジニアの上流工程とは?仕事内容、年収、メリット、求められるスキルを徹底解説

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メーカー系SIerでは、製造やテスト、運用保守を、パートナー企業と呼ばれる協力会社や関連会社に委託するケースが多いです。

委託する側の担当者は、まず作業の範囲や納品物、納期、進捗の報告方法を委託先と取り決めます。そのうえで、進捗を確認しながら、パートナー企業が作った成果物をレビューして品質を確かめるのも担当者の仕事です。

自分で作る代わりに、委託先の作業を取りまとめ、システム全体を完成させるまでを管理します。

メーカー系SIerが手がける案件は、親会社やグループ会社に向けたものと、グループ外の顧客に向けたものに分かれます。

親会社向け案件では、グループで使うシステムを長期にわたって担当するケースが多いです。

一方で、外部顧客向け案件では、提案の段階でほかのSIerと比べられます。顧客が示すRFPと呼ばれる提案依頼書に沿って、体制やスケジュール、費用をまとめた提案書をつくるのも仕事のひとつです。

どちらの案件を多く担当する所属先かによって、日々の仕事の中身は変わります。この違いは、求人票の職種名からは読み取りにくい部分です。

分野別のメーカー系SIer企業10選

メーカー系SIerは、親会社の事業領域によって、得意とする分野や案件の性格が変わります。ここでは、親会社の分野ごとに代表的な企業を紹介します。

  • 電機メーカー系SIer
  • 通信・インフラメーカー系SIer
  • 精密機器・OA機器メーカー系SIer

親会社の分野によって仕事内容や身につく経験は異なるため、自分が伸ばしたい方向性と比べながら見ていきましょう。

電機メーカー系SIerは、コンピューターやサーバーを製造する電機メーカーのグループに属するSIerです。メーカー本体のSI部門に加え、担当する顧客や領域が異なるSI会社がグループのなかに複数ある場合もあります。

官公庁や自治体、金融機関、社会インフラを支える大規模な業務システムを、要件定義から運用保守まで担う案件が多いです。ただし構想策定や元請けは親会社本体が担い、グループ会社は構築を引き受けるという役割分担になっている場合もあります。

社会基盤に関わる大規模なシステムで、要件定義やプロジェクト管理を経験しやすい企業です。大規模案件の上流工程やマネジメントの経験を積みたい人に向いていますが、志望先がグループのなかでどの領域を担っているかは確認しておきたいところです。

代表的な電機メーカー系SIer企業を紹介します。

日立ソリューションズ/日立システムズ

日立ソリューションズ/日立システムズは、日立製作所グループのSIerとして、企業向けにシステムの企画・構築から導入後の運用まで幅広く支援する立ち位置です。

日立ソリューションズは、製造や流通、金融、公共など幅広い業界に向けたソリューション開発とSIが中心です。日立システムズは、システム構築に加えて、運用・監視・保守やネットワークまでを担っています。同じ日立グループでも、開発寄りか運用寄りかで経験できる仕事が変わる点を押さえておきましょう。

・参考:日立ソリューションズ ・参考:日立システムズ

NEC(旧 NECソリューションイノベータ)

NECは、官公庁や大手企業に向けたシステム構築を主に手がけています。AIの活用やコンサルティングの強化も進めており、システム構築にとどまらない上流の仕事に携わる機会があります。

・参考:NEC (※)NECソリューションイノベータは2026年10月1日にNECに吸収合併されました。(プレスリリース)

富士通Japan

富士通Japanは、自治体や医療・教育機関などに向けたシステムの導入支援を担う会社です。顧客と直接向き合う立場で、課題の整理からシステムの導入まで一緒に進められます。

・参考:富士通Japan

三菱電機デジタルイノベーション

三菱電機デジタルイノベーションは、三菱電機グループのIT・DXと、グループ外の企業に向けたシステム構築の両方を手がけています。製造業をはじめ幅広い業種の案件に、コンサルティングから運用保守まで一貫して関われる会社です。

・参考:三菱電機デジタルイノベーション

通信・インフラメーカー系SIerは、通信機器メーカーのグループに属するSIerです。

企業や自治体、通信事業者のネットワークを、設計・構築から運用・保守まで一貫して手がける案件が多くあります。ネットワークの工事や、全国の拠点での保守まで自社で担う点が特徴で、サーバーやネットワーク機器の枠を超えた設備を超えた設備を扱う案件もあります。

ネットワークの設計から運用・保守までを、ひとつの会社のなかで一通り経験しやすい企業です。インフラの専門性を軸に、設計から現場での構築・運用まで経験を積みたい人に向いています。

代表的な通信・インフラメーカー系SIer企業を紹介します。

NECネッツエスアイ

NECネッツエスアイは、ネットワークを軸に、ICTシステムの企画・設計から構築、工事、保守・運用までを手がけています。消防・防災のシステムなど社会インフラに関わる案件もあり、設計から運用までつながる経験を積める会社です。

・参考:NECネッツエスアイ

富士通ネットワークソリューションズ

富士通ネットワークソリューションズは、情報通信ネットワークの企画・コンサルティングから、設計、施工管理、現地調整、運用・保守までを手がけています。机上の設計にとどまらず、現地での施工や調整まで含めて、インフラの現場を経験できる環境です。

・参考:富士通ネットワークソリューションズ

OKIクロステック

OKIクロステックは、ICTシステムや電気設備の設計・構築・保守に加え、メーカーを問わない機器の保守・運用やヘルプデスクの運営も手がけています。全国の拠点網を活かし、ATMや通信機器などの導入から保守まで、現場に近い立場で携われます。

・参考:OKIクロステック

精密機器・OA機器メーカー系SIerは、複合機やカメラを手がけるメーカーのグループに属するSIerです。親会社がSIで使うサーバーやネットワーク機器を作っていない点が、他のメーカー系との大きな違いです。

親会社製品を組み合わせて提案する前提がないため、自社で開発したソフトウェア製品を事業の柱に据える企業が見られます。数理最適化や画像解析、製品に組み込むソフトウェアなど、親会社がものづくりで培った技術をそのまま商材にしている点も特徴です。

製品に近いところで働きたい人や、特定の技術を武器にキャリアを築きたい人に向いています。

代表的な精密機器・OA機器メーカー系SIer企業を紹介します。

キヤノンITソリューションズ

キヤノンITソリューションズは、SIやコンサルティング、ソフトウェアの開発・販売を手がけ、製造業や流通業向けの基幹業務システムに強みを持つ会社です。生産管理やサプライチェーンといった、ものづくりの業務に踏み込んだシステムに関われます。

・参考:キヤノンITソリューションズ

リコーITソリューションズ

リコーITソリューションズは、リコーグループの社内ITシステム構築・運用や、製品に組み込むソフトウェア開発に加え、グループ外の顧客向けソリューションサービスも手がけています。社内IT・製品開発・外部向けサービスと幅広い事業を展開しており、エンジニアとして多様なフェーズや技術領域を経験しやすい環境です。

・参考:リコーITソリューションズ

京セラコミュニケーションシステム

京セラコミュニケーションシステムは、ICT事業を中心に、通信インフラや太陽光発電のエンジニアリング、経営コンサルティングまで手がけています。ICT事業では、京セラグループの工場で使うシステムの導入・保守に加え、グループ外の企業のシステム構築にも携われます。

・参考:京セラコミュニケーションシステム

メーカー系SIer企業ランキングや、各社の特徴・エンジニアの成長環境については、以下の記事で解説しています。ぜひあわせてチェックしてください。

メーカー系SIerランキング【2026年10月最新】売上・年収・ホワイト度で優良企業を徹底比較

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メーカー系SIerの強みと特徴5つ

メーカー系SIerの魅力は、経営の安定性だけではありません。上流工程や大規模案件など、入社後に積める経験の質にも強みがあります。ここでは、メーカー系SIerの強みを次の5つに分けて解説します。

  • 親会社の安定した事業基盤と経営の安定性
  • 自社製品・プラットフォームに深く関われる
  • 大規模・長期プロジェクトに携われる
  • 研修制度・資格取得支援が整っている
  • 幅広い業界のシステムに関われる

いずれも、親会社グループに属していることから生まれる強みです。詳しく解説していきます。

メーカー系SIerは、親会社やグループ会社からの案件を継続して受けられるため、経営が安定しやすい特徴があります。親会社を持たず、案件を自社で獲得し続ける必要がある独立系SIerとは、この点が大きく異なります。

グループの社内システムの更改や保守など、先の見通しが立つ仕事を長く担当できる点も強みです。 同じ顧客の業務に腰を据えて向き合いながら、経験を積み重ねられます。

メーカー系SIerでは、親会社が開発した製品を前提にシステムを設計します。そのため、製品に詳しい技術者が社内に多く、わからないことを開発元に近い立場の人に聞きながら学べる環境です。

製品仕様や制約を理解したうえで設計し、障害時の切り分けまで経験できるため、基盤領域の専門性を深く伸ばせます。

また、ハードウェアとソフトウェアの両方を扱う機会が多いのも特徴です。機器の選定から、その上で動くソフトウェアの構成までを組み合わせて考えるなかで、システム全体を設計・提案する力が身につきます。

メーカー系SIerでは、官公庁や金融機関の基幹システムなど、数年単位で続く大規模なプロジェクトに携わる機会があります。元請けとして案件を受けることが多いため、要件定義や基本設計といった上流工程から関われるのも特徴です。

プロジェクトが長期にわたる分、要件定義から設計、導入、運用保守まで、ひとつのシステムができあがり、動き続けるまでの流れを通して経験できます。設計レビューの進め方や課題管理の手順、移行計画の組み立て方が型として身につくため、現場が変わっても同じ進め方を再現できる点が強みです。

将来的にリーダーやマネジメント職を目指すのであれば、大規模案件での合意形成や調整の経験は大きな武器になります。加えて、行政サービスや金融取引など、人々の生活に欠かせないシステムを自分の手で形にできる点は、大規模案件ならではのやりがいにもつながるでしょう。

メーカー系SIerには、親会社を含むグループ全体で人材育成の仕組みを整えている企業があります。制度の例は次のとおりです。

  • グループ社員向けの育成機関を設ける
  • 資格の取得者に報奨金を支給する
  • 外部研修に参加する機会を設ける
  • キャリア形成の相談窓口を設ける

日々の業務とは別に、研修で体系的に学べる機会があるのも特徴です。現職での学習時間が取りづらい方にとっては、業務のなかで専門性を高められる環境は大きな利点になるでしょう。

メーカー系SIerの顧客は、官公庁や金融、製造、流通、医療など幅広い業界にわたるのが特徴です。配属先によっては、ひとつの業界のシステムを長く担当し、その業界の業務に詳しくなれます。

業界特有の業務の流れや商習慣を理解していると、顧客の要望の背景をくみ取ったうえで要件を整理できます。技術に加えて業界の知識を持つエンジニアは、要件定義や提案の場面で評価されやすくなります。

メーカー系SIerのデメリット・注意点3つ

メーカー系SIerには、親会社グループに属するからこそ生まれる制約もあります。入社前に知っておけば、想定していた経験が積めないというずれを避けやすくなるでしょう。ここでは、代表的な注意点を次の3つに分けて解説します。

  • 管理・調整業務が中心になりやすい
  • 技術選定の自由度が低く、既存資産に縛られやすい
  • 親会社の方針がビジネスや待遇に影響する

それぞれの注意点を確認していきます。

メーカー系SIerでは、製造やテストをパートナー企業に委託する体制をとることが多く、社員の仕事は設計や進捗管理が中心になりやすいです。

その分、コードを書く時間は減り、関係者との調整や課題の管理に使う時間が増えていきます。上流工程が中心の業務では、実装のスキルを高める機会を得にくい点は理解しておきましょう。

また、特定の業界や顧客に強い会社では、同じ種類の案件が続きやすい傾向があります。たとえば同じシステムの運用保守を長く担当すると、業務への理解は深まる一方で、経験できる工程が限られます。

ただし、製品に組み込むソフトウェアを開発する会社のように、実装に深く関わり続けられる職場もあります。社内公募制度を設け、部門を越えて担当領域を変えられる企業もあります。

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メーカー系SIerでは、親会社やグループの製品を優先して採用する案件が多く、技術選定の裁量が限られる場合があります。たとえばクラウドを選ぶ場面でも、親会社が提供するクラウドサービスを優先して採用するといったケースです。

また、長く運用されてきたシステムを担当すると、そのシステムで使われてきた技術を引き継いで扱うことになります。そのため、扱える技術が特定の世代に寄りやすくなる点には気をつけましょう。

ただし、技術が顧客要件や運用制約で決まる状況はメーカー系に限らず起こるため、自由度の大小は企業名だけでは判断できません。同じグループのなかにも、クラウドネイティブな開発を内製で進める部門があります。技術選定の自由度は、配属される部門が担う領域によって大きく変わると言えます。

ミスマッチを避けるには、面接で「グループ標準以外の製品を採用した事例はありますか」「担当予定の案件では、使う技術を誰がどう決めていますか」と具体的に聞いてみるとよいでしょう。

メーカー系SIerの事業は、親会社グループの経営方針と強く結びついているのが特徴です。とくに売上の多くをグループ向けの案件が占める会社では、親会社の投資方針によって案件の量や優先度が変わる場合があります。近年は、グループ内のSI会社が親会社に統合されたり、複数の会社が1社にまとめられたりする再編も相次いでいる状況です。

グループ向けの案件は内販、グループ外の顧客向けの案件は外販と呼ばれ、その比率は会社によって異なります。外販の比率が高い会社ほど、親会社の投資方針が変わっても案件が途切れにくく、グループ外の顧客と向き合う経験も積みやすくなります。グループ依存が強い会社を選ぶ場合は、内販・外販比率と案件の実例をあわせて確認しておくと安心です。

待遇面では、年功的な人事制度の運用が残っている企業も多いです。親会社からの出向者が管理職のポストに就くケースもあり、昇格のペースが年次に縛られやすい点は理解しておきましょう。

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メーカー系SIerの年収・働き方

ここでは、業界団体の調査データをもとに、メーカー系SIerの年収と働き方の傾向を解説します。

  • 平均年収を他SIerと比較する

  • 残業時間・ワークライフバランスの実態を確かめる

  • 評価制度と昇給スピードの傾向をつかむ

データとあわせて、それぞれの傾向を確認していきましょう。

情報サービス産業協会(JISA)の調査では、資本系列別に見た30歳時点の平均年収が、次のとおり示されています。

資本系列30歳時点の平均年収回答企業数
メーカー系508.3万円14社
ユーザー系527.8万円47社
独立系479.3万円188社

(※)残業代を含まない数値です。回答企業数は分類によって異なります。 (※)JISAの定義では、コンピューター・メーカーの出資比率が50%以上の企業などがメーカー系に分類されます。

国税庁の調査では、30〜34歳の平均給与はおよそ449万円です。メーカー系の508.3万円は、この水準を約60万円上回ります。 同じJISAの調査内で比べると、独立系の479.3万円に対しては約29万円高い水準です。

また、OpenWorkの口コミでは30代で650〜700万に達するケースもあり、同じメーカー系でも、親会社本体と子会社では年収水準に差があることがわかります。有価証券報告書や採用サイトなどで、個社の給与額もあわせて確認しておきましょう。

参考:一般社団法人情報サービス産業協会「2025年版情報サービス産業基本統計調査」 参考:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」

JISAの同じ調査では、労働時間や有給休暇の取得状況も公表されています。メーカー系に分類される企業では、ITエンジニアの年間所定外労働時間、つまり残業や休日出勤の時間が253時間で、業界全体の218時間を上回ります。月あたりに換算すると約21時間です。

一方で、年次有給休暇の取得率は74.7%(業界全体73.1%)、テレワークを利用する従業員の割合は89.6%(同79.0%)と、いずれも業界全体を上回っています。

ただし、これは業界団体に加盟する企業の平均値です。部署や案件、時期による差はこの統計からはわからないため、選考の場で直近案件の残業時間や休日対応の有無を具体的に確認しましょう。

参考:一般社団法人情報サービス産業協会「2025年版情報サービス産業基本統計調査」

メーカー系SIerの評価や昇給の仕組みは、親会社グループの人事制度に沿って決まる企業が多いです。年功的な運用が残る企業では、成果を出しても昇給の幅が年次に応じた範囲にとどまりがちです。

一方で、職務の内容や責任範囲を明文化し、職責の大きさに応じて処遇を決める企業もあります。こうした企業では、設計やプロジェクト管理の実績を積み、担う職責が大きくなるほど昇格や昇給につながりやすくなります。

メーカー系SIer3つのキャリアパス

メーカー系SIerでは、PL・PMといったマネジメントだけでなく、基盤やネットワーク、運用設計など技術を深める方向でもキャリアを築けます。ここでは、メーカー系SIerのエンジニアの選択肢として、3つのキャリアパスを紹介します。

  • SEからPL・PMへステップアップする
  • 特定技術・製品のスペシャリストを目指す
  • 親会社やグループ会社への異動で経験を広げる

自分が進みたい方向性についてイメージしながら読んでみてくださいね。

メーカー系SIerでは、設計や構築で担当範囲を広げながら、まずはPL(プロジェクトリーダー)を目指すのが代表的なルートです。PLになると、チームの品質や進捗、課題の管理を担います。

PLとして経験を積んだあとは、次のキャリアとしてPM(プロジェクトマネージャー)を目指すことが多いです。PMは、社内外の関係者と調整しながら、人員や予算、納期、品質まで含めてプロジェクト全体を管理する立場です。

メーカー系SIerの案件は、協力会社を含めた大人数の体制で進むことが多く、PLの段階から複数のチームとやり取りしながら進行を管理する経験を積めます。 この経験が、プロジェクト全体を見渡すPMの仕事につながります。

プロジェクトマネージャー(PM)とは?年収・種類・キャリアアップ方法を徹底解説

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メーカー系SIerでは、マネジメントに進まず、特定の技術や製品の専門家としてキャリアを築く道もあります。社内に専門職のポジションを設けたり、専門性の高い職務を担う人材を職責に応じて処遇したりする企業も見られます。

こうした専門職として成長するには、製品の操作や設定に詳しいだけでなく、なぜその構成を選んだのか、運用をどう成り立たせたのかまで説明できる力が欠かせません。

設計の判断から設計ルールの標準化、監視や手順の見直しによる運用の改善まで一貫して担った経験は、マネジメントとは別の道で昇格を目指すうえでの強みです。

グループ会社の間で人材が異動できる仕組みも、メーカー系SIerならではの選択肢です。たとえば日立グループでは、グループ各社の求人に応募できるグループ公募制度があり、年間800件以上の求人が出ています。

親会社の情報システム部門や事業部門に移れば、システムを使う側に近い立場で要件をまとめ、業務の改善に関わる経験を積めます。

将来的に企画や業務の側に関わりたい場合は、制度の有無だけでなく、どの部署にどのような役割で移れるのかも確認しておきましょう。

参考:日立ソリューションズ「日立がグループ公募制度にリシテア/人財マッチングを導入し、人的資本経営を加速」

SIerから転職するなら?転職先や勤務先・年代別の戦略を解説

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メーカー系SIerに向いている人・向いていない人

メーカー系SIerが自分に合うかどうかは、会社の知名度や安定性よりも、入社後にどんな働き方をしたいかで考えると判断しやすくなります。というのも、上流工程やマネジメントを中心に経験を積みたい人と、手を動かす仕事を続けたい人とでは、合う環境が異なるためです。

ここでは、メーカー系SIerに向いている人と向いていない人の特徴を、それぞれ解説します。それぞれ自分の志向と照らし合わせてみましょう。

メーカー系SIerは、長期の更改や基幹刷新で、関係者と合意形成しながら品質を積み上げる働き方が合う人に向いています。これまで解説したとおり、担当する案件が数年単位で続き、協力会社を含めた体制の管理が仕事の中心になるためです。

  • 安定志向で、計画的に経験を積みたい人
  • 特定分野(基盤・ネットワーク・運用設計など)を深掘りして武器にしたい人
  • 標準化・再現性・品質といった積み上げ型の成果で評価されたい人
  • 関係者調整や合意形成を丁寧に進めるのが得意な人

特定業界(製造・公共・通信など)の業務や制約を理解し、数年単位で専門性を深めたい人ほど、メーカー系SIerの環境は強みに変わります。

案件ごとに最新技術を試し、技術選定を自分の裁量で主導したい人は、標準化の強い現場だとストレスを感じやすいと言えます。親会社の製品を優先して構成を決める前提があるためです。

  • 技術の自由度や裁量を最優先したい人
  • 短期で多業界の案件を回し、経験の幅を広げたい人
  • 意思決定の速さや、変化の大きい環境を好む人

ただし、メーカー系でも外販比率が高い部門では、提案や新技術の採用余地が大きいケースがあり、一律には判断できません。 短期間で複数業界を横断し、提案から開発までをスピード重視で回したい人は、案件が固定化しやすい部門かどうかを選考で確認しておきましょう。

メーカー系SIerへの転職を成功させるポイント

メーカー系SIerは、同じ会社でも、配属される部門や担当する案件によって仕事内容が大きく変わります。そのため、応募前に企業の情報と自分の経験を整理しておくことが、転職を成功させる近道です。ここでは、メーカー系SIerへの転職を成功させるためのポイントを4つ紹介します。

  • 転職の軸を明確にする
  • これまでの経験とメーカー系案件の親和性を整理する
  • 親会社の事業と自社製品への理解を深める
  • 転職エージェントを活用する

それぞれの準備の進め方を確認していきましょう。

転職活動を始める前に、転職で何を実現したいのかを整理すると、企業選びや選考の準備が進めやすくなります。具体的には、担当したい工程や職種、働く環境、働き方、年収といった条件のうち、優先したいものを転職活動の軸と決めておきます。

条件の優先順位が決まっていれば、求人票を見たときに応募するかどうかを判断しやすくなります。たとえば、上流工程に進みたいのか、実装を続けたいのかによって、同じメーカー系SIerでも選ぶべき部門は変わります。

優先順位をつけた条件をもとに、求人票や企業の情報を比べて、応募先を絞り込んでいきましょう。

中途採用では、企業はこれまでの職務経験をもとに、入社後に任せられる仕事があるかを見ています。そのため、自分の経験が応募先の仕事にどうつながるのかを、面接官がイメージできる形で伝えることが大切です。

メーカー系SIerの仕事の中心は、要件定義や基本設計といった上流工程と、協力会社を含めたプロジェクトの管理です。経験を振り返るときは、次の3つの観点で整理すると、重なる部分が見つけやすくなります。

  • 顧客と要件をすり合わせた経験
  • チームや進捗を管理した経験
  • 基盤やネットワークを設計・構築した経験

それぞれの経験は、担当した工程だけでなく、なぜその判断をしたのか、何が改善したのかまで整理しておきましょう。設計の経験であれば、性能や可用性、運用のしやすさのどれを優先し、何を譲ったのかまで説明できると説得力が増します。

親会社の事業や製品を理解しておくと、入社後にどんな顧客のどんな案件に関わるのかを、具体的にイメージしやすくなります。そのうえで、自分がこの会社でどんな仕事をしたいのかを考えると、企業側へのアピールに説得力が生まれます。反対に、安定しているという理由だけでは、入社後に何をしたいのかが伝わらず、受け身な印象を与えかねません。

応募の前に、次の3点を調べておくと、志望動機を具体的に組み立てられます。

調べること確認する内容
親会社の主力領域どの業界や製品群に強いか
グループ製品の位置づけ提案や設計の場面で、どの製品を軸にしているか
製品とSIを組み合わせた強み導入後の運用や改善まで含めて、何を強みにしているか

さらに、親会社の中期経営計画や統合報告書で、今後どの事業に力を入れるのかも確認しておきましょう。 注力する事業がわかると、入社後に増えそうな案件や、求められる技術の方向性を見通しやすくなります。

メーカー系SIerは、内販と外販の比率や配属される部門によって、担当する工程や判断できる範囲が変わります。そのため、求人票だけでは、上流工程の比率や運用の担当範囲まではわからない場合もあるでしょう。

転職エージェントを使えば、配属が想定される部門の案件例や、選考で重視される点といった、求人票に載っていない情報を確認できます。年収などの条件の交渉を代わりに進めてもらえる点も、個人で応募する場合との違いです。

応募先ごとの案件の実態を確かめたうえで比べれば、入社後のミスマッチを避けやすくなります。

メーカー系SIerへの転職ならテックゴーへ

メーカー系SIerへの転職は、企業名だけで判断せず、「どの部門で、どんな案件に、どの工程で関われるか」まで見極めることが重要です。とくに年収アップや上流工程への挑戦を狙う場合は、経験の棚卸しと応募先の選び方で、入社後に積める経験が大きく変わります。

テックゴーは、ITエンジニアの転職支援に特化した転職エージェントです。

テックゴーの転職支援が選ばれるポイント

  • エンジニアに特化した転職エージェントで、上流案件・ITコンサル領域に強い
  • アドバイザーは元エンジニア・ITコンサル出身者が多く、現場感覚に基づいたアドバイスに強み
  • 年収アップ金額は平均144万円(※1)
  • 年収アップ成功率は86%(※2)

メーカー系SIerの現場に詳しいアドバイザーが、あなたの経験を整理したうえで、メーカー系で評価されやすい強みの作り方と、求人を見る際の確認ポイントなどを無料で紹介します。「どこに応募すべきか」が曖昧なまま動く前に、ぜひご相談ください。キャリアについて一緒に考えましょう。

(※1)2026年3月に内定承諾をし、年収アップを実現された方の平均実績 (※2)同期間に内定を承諾された方のうち、年収アップを実現された方の割合

まとめ

この記事では、メーカー系SIerの特徴や仕事内容、強みと注意点、年収や転職を成功させるポイントを解説しました。メーカー系SIerは、親会社の製品を軸に、上流工程や大規模なプロジェクトに携われる点が強みです。一方で、管理業務が中心になりやすく、技術選定の自由度が限られる面もあります。

また、同じメーカー系SIerでも、配属される部門によって担当する工程や扱う技術は変わります。会社名だけで判断せず、転職で実現したいことをもとに、どの部門でどんな仕事ができるのかまで確かめたうえで応募先を選びましょう。

メーカー系SIerへの転職を考えているなら、エンジニア特化の転職エージェントであるテックゴーを活用するのもひとつの方法です。テックゴーは上流案件やITコンサル領域の求人に強く、元エンジニアやITコンサル出身のアドバイザーが、現場の仕事内容を踏まえて求人を提案します。

よくある質問

IT未経験からメーカー系SIerに転職できますか?

IT未経験からでも、メーカー系SIerへの転職はできます。未経験者を歓迎する求人では、第二新卒など社会人経験の浅い若手を対象にしたものが目立ちます。入社後の研修制度を整えている企業もあり、基礎から学びながら経験を積めるのも特徴です。 一方で、30代以降は即戦力の採用が中心になり、未経験からの難易度は上がります。エンジニアとしてのスキルや業界の知識、マネジメントの経験などが求められるためです。 大手メーカーのグループ会社のなかには未経験者を募集している会社もあるため、親会社だけでなくグループ会社まで視野を広げて求人を探してみましょう。

メーカー系SIerの親会社は?

メーカー系SIerの親会社は、日立製作所や富士通、NECといった電機メーカーが代表的です。 このほか、三菱電機や沖電気工業、キヤノン、リコー、京セラといったメーカーも、グループのなかにSIを担う会社を持っています。なお、日立製作所や富士通、NECのように、親会社の本体がSI事業を手がけている場合もあります。

メーカー系SIerの将来性は?

経済産業省は、2030年時点のIT人材の需給を複数シナリオで試算しています。この試算は、業界の長期的な方向性を考える材料になります。また、IPAの「DX動向2025」でも、DX推進に必要な人材の不足が論点として整理されました。 **社内でIT人材を確保しきれない企業は少なくありません。そのため、設計から運用まで一貫して担えるメーカー系SIerへの需要は、今後も続くでしょう。** ただし、顧客のシステムがクラウドやSaaSへ移るなかで、親会社の製品を前提にした提案だけでは対応できる範囲が狭まる可能性もあります。応募先を選ぶ際は、クラウドへの移行支援やAIの活用など、製品の枠を越えた取り組みにどこまで力を入れているかも確認しておきましょう。 参考:経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課「IT分野について」 https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/daiyoji_sangyo_skill/pdf/001_06_00.pdf 参考元:IPA独立行政法人情報処理推進機構「DX 動向 2025」 https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/tbl5kb0000001mn2-att/dx-trend-2025.pdf