IT土方とは?意味と由来をわかりやすく解説
2025年10月23日更新
IT業界で「IT土方」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。
一見過激に聞こえますが、その背景には、長時間労働や多重下請け構造といった業界特有の課題が存在します。「もしかしたら、自分の働き方も当てはまるのでは?」と感じている方もいるかもしれません。
本記事では、「IT土方」という言葉の意味や由来を整理し、そのような環境から抜け出すための具体的な方法をわかりやすく解説します。
著者

蓬田 和己
Yomogita Kazuki
早稲田大学卒業後、レバレジーズ株式会社に入社。キャリアアドバイザーとして開発、データ職種のエンジニアの方の支援に従事。歴代最速で事業部内単月支援者数、売上1位を獲得し、組織目標の達成に大きく貢献。社内での異動、キャリアアップ、転職もどれが良いのか単純には決められないので、お客様にとって最善の選択肢を一緒に考えていきたいという思いから、MyVisionに参画。
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監修者

大河内 瞳子
Okochi Toko
株式会社MyVision執行役員
名古屋大学卒業後、トヨタ自動車での海外事業部、ファーストリテイリング/EYでのHRBP経験を経てMyVisionに参画。HRBPとして習得した組織設計、採用、評価などの豊富な人事領域経験を生かした支援に強みを持つ。
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目次
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IT土方とは?意味と由来をわかりやすく解説
「IT土方」とは、IT業界における厳しい労働環境や、構造的な問題を象徴する言葉です。
もともと「土方(どかた)」は建設現場で力仕事をする人を指す言葉でしたが、近年では、知的労働であるはずのIT業務が単純作業に偏ってしまう状況を指す際にも使われるようになりました。
「IT土方」という言葉の背景と由来
この言葉は、特にSES(システムエンジニアリングサービス)企業や下請けの現場で働くエンジニアを指すときによく使われます。
「土方」という言葉は、もともと江戸時代に土木の仕事をする人への敬称として生まれ、のちに建設現場で働く人の呼び方として広まりました。
IT業界では、上流の発注元から下流の開発現場まで複数の企業が関わる「多重請負構造」が存在し、下流工程ではエンジニアが指示通りの作業をこなすだけになるケースもあります。
本来は専門スキルを発揮できる職種であるにもかかわらず、作業中心の環境に置かれている姿が重ね合わされ、「IT土方」と呼ばれるようになったのです。
なぜ“IT業界の闇”を象徴する言葉として使われるのか
IT業界は高い専門性を求められる分野でありながら、受託開発や下請けが複雑に入り組む構造を抱えています。
仕事が上から下へと流れる過程で、エンジニアの裁量が小さくなり、長時間労働や単調な作業に追われるケースも少なくありません。
そのため、本来はスキルを磨き、成長できる環境であるべき職場が、ただ作業をこなすだけの働き方に変わってしまうことがあります。
こうした構造的な課題こそが、「IT土方」という言葉がIT業界の“闇”を象徴する理由といえるでしょう。
IT土方の実態とは?現場で起きていること
「IT土方」という言葉が広まった背景には、実際の労働環境に深い課題があります。
特にSESや下請け構造の中で働くエンジニアほど、この影響を受けやすい傾向があります。
ここでは、現場で多くのエンジニアが直面している実態を紹介します。
SES・下請け構造による多重請負の現実
IT業界では、大手企業が発注した案件を一次請けが受け、その後二次請け・三次請けへと流していく構造が一般的です。
このようなSES構造の中で働くエンジニアは、プロジェクト全体の目的や仕様の背景を知らされず、指示通りに作業を進めるだけというケースも少なくありません。
「なぜこの仕様なのか」「誰のためのシステムなのか」を理解できないまま日々の作業を繰り返すうちに、仕事へのやりがいを失ってしまうこともあります。
スキルよりも稼働時間が重視される環境では、成長よりも労働量そのものが評価されやすい文化が生まれやすいのが現実です。
長時間労働・単純作業に偏る働き方
納期に追われる現場では、エンジニアが深夜や休日に稼働することも珍しくありません。
下流工程ではテストや修正対応など、単純作業が中心となり、長時間労働が常態化しがちです。「毎日終電なのに評価が上がらない」「やってもやっても終わらない」と感じる人も多いでしょう。
このような働き方が続くと、モチベーションが下がり、中には燃え尽きてしまうケースもあります。
スキルが伸びにくくキャリアが停滞しやすい理由
下流工程が中心の環境では、新しい技術や上流工程に関わる機会が限られます。
そのため、経験を積んでも市場価値が上がりにくく、「3年働いても転職で評価されない」と悩むケースも少なくありません。常駐先が変わっても似たような作業が続く場合、将来のキャリアを具体的に描くことは難しくなります。
結果として、「このままでいいのか」という不安を抱えたまま働き続ける人も少なくありません。
IT土方になりやすい環境・企業の特徴
IT土方的な働き方は、個人の努力ではなく環境によって生まれやすい構造的な問題です。
どのような企業がそのような環境を生みやすいのかを把握しておくことが、キャリアを守る第一歩になります。
客先常駐がメインで下流工程ばかり任される
SES企業の中には、ほとんどの社員が客先常駐で働くケースもあります。
常駐先ではテストや運用保守など、下流工程中心の業務を任されることが多く、上流工程に携わる機会は限られます。「誰の指示で動いているのか分からない」「自社への帰属意識が持てない」と感じる人も少なくありません。
このような環境では、キャリア形成が難しく、成長機会が限られてしまいます。
教育体制やキャリア支援が整っていない
研修や資格支援などの教育制度がない企業や、そこまでなかなか手が回らない企業では、エンジニアが自力で学んでいくしかありません。
日々の業務に追われ、学習の時間を確保できないままスキルが停滞してしまうケースもあります。「業務で必要なことしか学べない」「自分の成長が感じられない」と悩む声も多いです。
その結果、キャリアの方向性を見失い、転職を検討しても評価されにくいという悪循環に陥る可能性があります。
単価・稼働時間でしか評価されない環境
エンジニアのスキルや成果よりも、「人月単価」や「稼働時間」で評価される企業も存在します。
こうした環境では、長く働くほど評価されるという構造が生まれやすく、残業を前提とした労働文化や給与体系が根付いている場合もあります。
本来、エンジニアは技術力や成果で評価されるべき職種ですが、時間で判断される体制ではモチベーションの維持が難しくなります。
その結果、努力が報われにくい風土が固定化し、IT土方的な働き方から抜け出せない状況に陥るリスクが高まります。
IT土方と呼ばれない働き方とは?
IT土方と呼ばれる働き方の対極にあるのが、スキルと成果が正当に評価される環境です。
自らキャリアの方向性を選び、主体的に働ける環境を選ぶことで、安定と成長の両立が可能になります。
ここでは、IT土方とは一線を画す働き方とはどんなものか、3つ紹介します。
自社開発・プライム案件に関わる働き方
自社開発企業やプライムベンダーでは、要件定義から開発・運用まで一貫して携われるケースが多く見られます。
ユーザーの反応を直接確認しながらサービスを改善できるため、成果が目に見える形で実感できるのが特徴です。
「自分の手で価値を生み出している」という達成感が得られ、日々の業務にも高いモチベーションを維持できます。
また、技術選定やスケジュール管理など、エンジニア自身が意思決定に関われる点も大きな魅力です。
要件定義や設計など上流工程に携わるキャリア
上流工程に携わるエンジニアは、顧客の課題を正確に把握し、最適なシステムを設計・提案する役割を担います。
システム全体を俯瞰して考える力が身につき、技術だけでなくビジネス理解も深まります。「どうすれば業務を効率化できるか」「どんな仕組みが最適か」を考えるプロセスに関わることで、より専門的なスキルが磨かれます。
結果として、年収アップやキャリアの選択肢を広げるチャンスにも直結します。
技術力で案件を選べるエンジニアを目指す
市場価値の高いエンジニアは、自らの技術力を武器に、働く場所や案件を主体的に選択できます。
クラウドやインフラ設計、複数の開発言語などを習得していれば、携われるプロジェクトの幅が一気に広がります。
「どんな現場でも通用する技術力」を身につけることが、安定したキャリアを築く最短ルートです。
スキルと成果で評価される環境を選ぶことこそ、IT土方的な働き方から脱出する確実な第一歩といえるでしょう。
IT土方から抜け出す方法
「このまま今の環境にいても成長できない」「自分の働き方はIT土方かもしれない」と感じているなら、今こそキャリアを見直すべきタイミングです。
IT土方的な働き方から抜け出すには、スキルを磨く努力と、より良い環境を選ぶ行動の両立が重要になります。
ここでは、キャリアを大きく前進させるための3つのステップを具体的に解説します。
スキルアップで上流工程・自社開発への転職を狙う
まずは、自身のスキルセットを客観的に見直し、「どの分野を伸ばせば上流工程に関われるか」を明確にしましょう。
たとえば、要件定義や設計の経験が乏しい場合でも、クラウドやインフラ構築などの専門知識を学ぶことで、転職の選択肢を大きく広げることができます。
自社開発やプライム案件を手がけるSIerへの転職では、技術力に加えて、課題解決力やコミュニケーション力も重視されます。
※SIer(エスアイヤー)とは、System Integrator(システムインテグレーター)の略称で、企業や官公庁などのクライアントに対し、システムの企画・設計・開発・導入・運用までを一括して請け負う企業を指します。
現場で培った経験を活かしながら、次のキャリアにつながるスキルを計画的に磨いていくことが、キャリアアップへの確実な一歩となります。
資格取得(AWS・基本情報・応用情報など)で市場価値を高める
資格は、自身の知識とスキルを客観的に証明できる有効な手段です。
特に、AWS認定資格や基本情報技術者・応用情報技術者といった資格は、IT業界での信頼性が高く、転職市場でも高く評価される傾向があります。
独学で取得できる資格も多く、業務の合間に学習を進めることで、IT土方的な働き方から一歩抜け出すきっかけにもなります。
資格取得はゴールではなく、今後のキャリア選択肢を広げるための第一歩として位置づけましょう。
転職エージェントを活用してホワイト企業へキャリアチェンジ
自分に合った環境を見つけるには、業界知識を持つ転職エージェントを活用するのが最も効率的です。
IT・エンジニア分野に特化したエージェントであれば、SES中心の企業を避けつつ、自社開発やプライム案件など上流工程に関われる求人を紹介してもらえます。
「自分に合う働き方がわからない」「どんな企業を選べば良いか迷っている」といった段階でも、専門アドバイザーが客観的な視点でキャリアの方向性を整理してくれます。
専門家のサポートを受けながら転職活動を進めることで、ホワイト企業へのキャリアチェンジを実現しやすくなります。
IT土方を避けるための企業選びのポイント
T土方的な働き方を避けるためには、転職先の選定段階で慎重に見極めることが重要です。
同じ「エンジニア職」でも、企業の構造や案件の形態によって働き方や成長機会は大きく異なります。
ここでは、転職前に確認しておきたい4つのポイントを解説します。
客先常駐比率・請負構造をチェックする
求人票に「客先常駐あり」と記載されている場合は、その比率を必ず確認しましょう。
常駐案件が中心の企業では、下流工程を担当する機会が多く、裁量を持ちにくい傾向があります。
また、何次請けとしてプロジェクトに参画しているかも重要な判断材料です。一次請けや直請けに近い立場の企業を選ぶことで、上流工程に携われる可能性が高まり、安定した働き方を実現しやすくなります。
教育体制・キャリア支援制度の有無を確認
教育体制や資格取得支援、定期的なキャリア面談の有無は、入社後の成長を左右する重要な要素です。
エンジニアのスキルアップを支援する企業は、社員の長期的なキャリア形成を重視する傾向があります。「入社後の研修制度があるか」「キャリア相談が定期的に行われているか」を確認しましょう。
教育投資を惜しまない企業ほど、人材を大切にする文化が根付いているといえます。
自社開発率や直請け比率を見る
自社開発案件や直請けプロジェクトの比率が高い企業は、開発の全体像を把握しながら働けるのが特徴です。
エンドユーザーと直接関わることで、成果が見えやすく、技術力の向上にもつながります。
面接時には「どの工程から関われるのか」「技術選定の自由度はあるのか」を具体的に確認するのがおすすめです。
上流から下流まで一貫して携われる環境ほど、スキルとキャリアの両方を伸ばしやすくなります。
社員の口コミ・評判で労働環境を見極める
企業HPや求人票ではわからないリアルな情報は、社員の口コミサイトやSNSを活用して収集しましょう。
「残業時間」「評価制度」「職場の雰囲気」などを複数の声から確認することで、実際の労働環境が見えてきます。
特に、離職率が低く、エンジニアが長く定着している企業は、働きやすい環境である可能性が高いです。
現場の声を参考にすることで、入社後のギャップを最小限に抑えられます。
まとめ:IT土方にならないためには“環境選び”がすべて
IT土方と呼ばれる働き方は、個人の能力ではなく、環境の問題によって生まれるケースが大半です。
どれだけ努力しても、評価基準が「稼働時間」や「人月単価」に偏った職場では、スキルや成果が正当に評価されにくいのが現実です。
一方で、上流工程や自社開発など、主体的に働ける環境に移ることで、同じエンジニアでも成長スピードと年収は大きく変わります。
「今の環境を変えたい」と感じたときが、キャリアを見直す絶好のタイミングです。
テックゴーが選ばれる理由
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大手企業や非公開求人とのネットワークも豊富で、キャリアアップを目指す方はもちろん、初めて転職する方も安心してサポートを受けられる体制が整っています。
「IT土方的な働き方から抜け出したい」「より成長できる環境に移りたい」と感じている方は、まずはTechGoの無料相談を通じて、自分に合ったキャリアの可能性を確認してみてください。
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