フルスタックエンジニアがいらないは本当?評価される条件と将来性を解説
2026年01月05日更新
フルスタックエンジニアについて調べていると、「強みが分かりにくい」「結局、いらないのでは?」といった声を目にすることがあります。
幅広い技術を扱える魅力からフルスタックエンジニアを目指そうとしている人は、このような声によって不安や迷いを感じているのではないでしょうか。しかし、実際の現場ではフルスタックエンジニアが高く評価されているケースも多くあります。
本記事では、「フルスタックエンジニアはいらない」と言われる理由を整理しつつ、市場で求められるフルスタックエンジニアの特徴や、キャリアの築き方までを分かりやすく解説します。
著者

川村 莉子
Kawamura Riko
名古屋工業大学卒業後、新卒でDirbatoに入社。通信会社に対する業務改善プロジェクトや次世代ネットワーク移行案件のPMOなどに従事。自身のコンサルタント経験を活かした、IT系コンサルファームへの開発支援を得意とする。
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監修者

岡﨑 健斗
Okazaki Kento
株式会社MyVision代表取締役
東京大学を卒業後、ボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社。主に金融・通信テクノロジー・消費財業界における戦略立案プロジェクトおよびビジネスDDを担当。採用活動にも従事。 BCG卒業後は、IT企業の執行役員、起業・売却を経て、株式会社MyVisionを設立。
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目次
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「フルスタックエンジニアはいらない」と言われる理由とは?
IT業界への転職やエンジニアとしてのキャリアパスを考えていると、「フルスタックエンジニアはいらない」という声も耳にします。結論として、フルスタックエンジニアは市場価値が高い人材です。
しかし、実際に市場で評価されているフルスタックエンジニアは、”専門性が高い人” であることを忘れてはいけません。まずは、「フルスタックエンジニアはいらない」と言われる背景を理解していきましょう。
専門性が浅くなりやすい
フルスタックエンジニアの中には、いわゆる器用貧乏で、「幅広い領域の基礎は理解しているが、専門性が浅い」という人材も少なくありません。IT業界はトレンドの移り変わりが速く、それぞれの分野で専門性が求められるため、広く浅い知識では評価されにくいケースがあるのです。
そのため、実際の現場で重宝されやすいのは、特定の分野に特化したエンジニアです。フルスタックエンジニアという肩書き自体は魅力的に映るものの、実際には「結局どの分野が強みなのか分からない」と受け取られてしまい、採用側にとって評価しづらい存在になってしまうこともあります。
得意分野がハッキリしなければ、実際の現場でどのように活躍できるかイメージがつかず、「フルスタックエンジニアはいらない」となってしまうのです。
分業体制の開発現場では役割が曖昧になりがち
実際の現場では、プロジェクトの規模が大きいほど、役割分担が明確に決まっています。これはチームや役割ごとの専門性を深めることにより、難易度の高い課題を効率的に解決したり、責任の所在を明確にしたりなど、生産性を向上できるためです。
このような環境では、フルスタックエンジニアのなんでもできる強みが活かされず、存在価値がなくなってしまうこともあります。
企業側の期待値が過剰になりやすい
企業側が採用時に過剰な期待を寄せてしまった結果、「フルスタックエンジニアはいらない」となるケースもあります。具体的には「なんでもできる=1人分の給料で3人分の働きをしてくれる」など、都合の良い解釈をされてしまうパターンです。
また、フルスタックエンジニアは一般的なエンジニアよりもやや高い給与水準を保ちます。そのため、フルスタックエンジニア1人の採用と、各分野それぞれにスペシャリストを採用するコストを天秤にかけた結果として、「いらない」と判断されることもあります。
本当にフルスタックエンジニアは不要なのか?
専門性が曖昧だと見なされやすい側面があるフルスタックエンジニアですが、実際の開発現場や転職市場においては、実は高い需要もあります。ここでは、具体的にどのようなフルスタックエンジニアが求められているのかを解説します。
市場で求められている「フルスタック」の実態
実際に市場で求められているフルスタックエンジニアは、開発全体の流れを理解したうえで、自分の強みを発揮できる人材です。フルスタックエンジニアの強みは、幅広い領域における知識があるからこその、課題点の早期発見・早期解決の提案ができる点にあります。
また、異なる領域にまたがる知識を備えていることから、チームや部署の間で認識のズレなどが発生した場合には、技術的な観点から橋渡し役として調整し、開発を円滑に進められるのも、フルスタックエンジニアの強みとして活かせるポイントです。
軸となる専門分野を明確にしながら、こうした幅広い役割に対応できるスキルも身に付けていくと、市場で求められるフルスタックエンジニア像に近づけるようになるでしょう。
フルスタックの定義が企業ごとに異なる現実
フルスタックエンジニアの「どこまで何をするか」といった定義は、企業ごとに異なります。フロントエンドからインフラまでを指す場合もあれば、保守運用までを含めてフルスタックと呼ぶ企業もあります。
この定義の曖昧さは、採用時のミスマッチを生む大きな原因です。そのため、「フルスタックエンジニア」という肩書きに頼るのではなく、担当できる領域や得意分野、具体的なスキルなどをそれぞれ明確に言語化することが重要なポイントとなるでしょう。
また、求人情報を探す際には、各企業が求めるスキルや役割を把握し、ミスマッチの可能性が低い企業を選ぶことも重要です。
フルスタックエンジニアが評価される環境・評価されにくい環境
前述のとおり、フルスタックエンジニアの定義は企業によって異なります。したがって、求められるスキルや評価も変わるため、フルスタックエンジニアとして評価されるなら環境選びも重要なポイントです。ここでは、どのような環境で評価されやすいかを見ていきましょう。
スタートアップや少人数チームでの価値
フルスタックエンジニアのもっともたる強みは、一人で複数の役割を担える点にあります。限られたリソースの中でもプロジェクトを進めやすく、少人数でも高い結果に導ける大きな存在です。そのため、スタートアップや少人数チームなどにおいては、非常に重宝されます。
とくに人手不足の現場や、複数人の専門エンジニアを雇用する予算がない企業にとっては、コスト削減の側面からもメリットが大きく、開発スピードと柔軟性の両立が期待されるでしょう。
大規模開発・SIerで評価されにくい理由
小規模での価値が高い一方で、大規模開発やSIerの現場では、フルスタックエンジニアが評価されにくくなる傾向があります。その背景には、フルスタックエンジニアのスキルや役割よりも、リスク管理を重視する開発体制の考え方が大きく影響しています。
たとえば、大規模なプロジェクトでは、各領域や工程で分業することにより、品質管理やトラブル対応の精度を高めるのが一般的です。
万が一のトラブルが発生した際の影響範囲が広いため、各工程ごとに責任の所在を明確にしなければなりません。
したがって、小規模では強みとして発揮されるフルスタックエンジニアの “柔軟性” が、大規模なプロジェクト下においては、リスクと見なされてしまうケースがあります。
フルスタックが機能する開発体制の条件
フルスタックエンジニアとして、正当な評価を受けながら働くためには、以下のような条件が揃っている環境を選ぶと良いでしょう。
- 設計から実装まで一貫して関われる
- 役割分担が固定されすぎず、領域を横断する体制である
- 意志決定のスピードが速い体制である
フルスタックエンジニアの強みは、一気通貫の視点が持てることですが、工程が細かく分断された体制では、その強みが発揮されにくくなります。
また、自分が書いたコードがシステム全体にどう影響を与えるのかが見えづらく、フルスタックエンジニアとしてのやりがいも感じにくくなってしまうこともあります。
フルスタックエンジニアには、領域を越えてプロジェクトの達成を目指し、互いにフォローをし合えるような環境や文化のほうが、マッチするはずです。
また、意志決定のスピードが速い組織であれば、フルスタックエンジニアの柔軟性や機動力が活かされ、チーム全体を引っ張っていく存在として高く評価されるでしょう。
専門特化エンジニアとの違いとキャリア戦略
エンジニアとしての方向性を考えるとき、「フルスタックエンジニアと専門特化では、どんな違いがあるのか」に視点を置くことが重要です。あなた自身の強みを考え、市場での評価を高めるためのポイントを解説します。
フロントエンド・バックエンド特化との比較
専門特化エンジニアとの最大の違いは、担当する範囲の広さです。特定の領域に対する深い知識やスキルが大きな武器となる専門特化エンジニアに対し、フルスタックエンジニアは複数の異なる領域を横断することができます。
ただし、即戦力として採用されやすいのは強みが明確な専門特化エンジニアです。フルスタックエンジニアが高い評価を得るためには、「なんでもできます」というだけでは不十分です。開発全体を広く見渡し、チームを導くリーダーシップを発揮できる力も求められるでしょう。
フルスタックエンジニアとしての転職を見据えるのであれば、まずはフロントエンドやバックエンドのいずれかで「即戦力」として評価される実績を積み、その後に対応領域を広げていくほうが、選考での評価につながりやすくなります。
キャリア初期・中期・後期での最適な選択
フルスタックエンジニアとして市場価値を高めながら成長していくためには、軸となる専門分野を身に付けること・周辺領域の理解を広げること・開発全体を俯瞰できる力を養うことがポイントです。
- キャリア初期(未経験~学習段階):基礎力と実務経験を固める
- キャリア中期(実務経験3~5年程度):軸となる専門領域を伸ばす、関連領域の知識を深める
- キャリア後期(リーダー、シニア層):設計やアーキテクチャの意思決定に関わる、チームの開発速度や品質を引き上げる存在を目指す
キャリア形成に必要なスキルは一朝一夕で身に付くものではありません。そのため、上記したように、キャリアステージに応じて段階的に積み重ねていくことが重要です。
「軸のあるフルスタック」が評価される理由
フルスタックエンジニアとして評価されるためには、1つの分野に専門性を持ちつつ、その周辺領域も横断できる知識を備えている「軸のあるフルスタックエンジニア」になることが重要です。
たとえば、「バックエンドに強いフルスタック」「AWSに精通したフルスタック」といったように、もっとも得意とする分野を明確にした上で、その周辺のフォローも可能であることがアピールポイントだといえます。
このようなフルスタックエンジニアであれば、設計段階でフロントエンドの要件まで見据えたデータ構造の提案ができたり、業務プロセス全体のボトルネックを未然に防ぐ改善策を示せるため、さまざまな現場で重宝されます。
フルスタックエンジニアを目指すメリット・デメリット
フルスタックエンジニアは幅広い領域に関わる面白さがあり、成長のチャンスも多い立ち位置です。その一方で、フルスタックエンジニアを目指す道のりには、メリットとデメリットの両方が存在します。
ここからは、フルスタックエンジニアを目指す人が後悔しない選択をするために、メリットとデメリットを開設していきます。
メリット:全体設計力・開発スピード・柔軟性
フルスタックエンジニアを目指す最大のメリットは、開発全体を広く見渡した設計力が身に付くことです。複数の異なる領域への理解があるため、たとえば「ユーザー目線での操作性」と「システム全体のコスト改善」など、ユーザー体験からインフラまで、一貫した設計ができるようになります。
また、1人で複数の工程を担当できるのも、フルスタックエンジニアの強みです。意思決定から実装、検証といった一連の流れを迅速に進めていけるので、開発スピードを上げる力や柔軟性が身に付きます。
このように、フルスタックエンジニアとしての価値を高めるように成長していくと、幅広い分野で活躍できる力が身に付くようになることは、フルスタックエンジニアを目指すメリットと言えます。
デメリット:学習コストの高さ・評価の難しさ
フルスタックエンジニアは、幅広い領域の知識を身に付ける必要があり、実務経験まで含めると習得には膨大な時間がかかります。
また、これまで繰り返しお伝えしてきたとおり、専門的なエンジニアと比べて評価がしにくく、採用や昇進などのタイミングで強みを伝えにくいこともデメリットです。
これからフルスタックエンジニアを目指す場合には、こうしたデメリットがあることを前提とし、「計画的に学習して無駄を減らす」「専門性の軸を持つ」など、先回りしてカバーできるように努めましょう。
フルスタックエンジニアに向いている人・向いていない人
これまで解説してきた内容を踏まえ、フルスタックエンジニアに向いている人・向いていない人の特徴をまとめます。
向いている人の特徴
- 仕組みに対して「なぜ?」という疑問を持ち、掘り下げたくなる人
- 専門外の領域に対しても、自ら興味を持って学習できる人
- 開発の全体を俯瞰しながら進められる人
- 変化の多い環境でも学びとして受け止め、前向きに取り組める人
上記の特徴に共通しているのは、開発全体のつながりを理解しようとする姿勢です。「自分が選んだツールやプロダクトが全体にどんな影響を与えるか」を考えながら動くことが求められます。
向いていない人の特徴
- 担当する範囲が明確になっていないと不安な人
- 1つの技術を極めることが好き、そこに価値を感じる人
- 明確な評価軸がないとモチベーションが保てない人
デメリットで挙げたとおり、フルスタックエンジニアは学習コストが高く、成果や強みが見えにくいため、「評価されにくい」と感じる場面も少なくありません。とくに、役割がはっきりと定義されていない企業や現場においては、求められていることが分からず不安になることもあります。
また、フルスタックエンジニアは「何をどこまで学ぶか」「自分の軸となる専門分野は何か」など、自分で考えて答えを出す力も求められます。
学習やキャリアの方向性を設計するのが苦手な人にとっては、学習コストに対する手ごたえを感じられず、挫折につながることもあります。
特定の分野を深く学び、常に分かりやすい評価が欲しい人は、専門的なエンジニアのほうが成長しやすいでしょう。
「いらない」と言われないためのフルスタックキャリアの築き方
フルスタックエンジニアとして「いらない」と言われず、着実にキャリアを築いていくためには、どのような点を意識したらいいのでしょうか。この項目では、高く評価されるフルスタックエンジニアになるための、キャリア設計のポイントを解説します。
まず専門領域を確立する重要性
フルスタックエンジニアとしての信頼の土台となるのは、専門性です。専門性があるからこそ、他領域とのつながりを理解し、設計や技術選定に説得力を生み出します。
軸となる専門領域がない状態では、自分自身でも何が強みなのか分かりにくくなるでしょう。その結果として、周囲も何をどこまで任せたらいいのか判断できず、曖昧な役割のまま進んでしまう、正当に評価されないなどのケースにつながってしまいます。
まずは1つの分野で実績を積み重ね、そこから対応できる領域を広げるイメージで成長していくことが、信頼されるフルスタックエンジニアへの近道です。
フルスタックを名乗る際の注意点
「フルスタックエンジニアです」と名乗っても、何ができる人材なのかが分かりません。また、相手の解釈次第では、自分ができること以上の期待を寄せられるなど、ミスマッチを生む原因です。
重要なのは、フルスタックエンジニアの肩書きに頼らず、自分の言葉で「何ができるのか」を具体的に伝えることです。
たとえば、「主軸はバックエンドですが、フロントからインフラまでひととおり対応可能です」と言えば、あなたが完ぺきに対応できる領域(バックエンド)と、フォローできる領域(フロントエンド、インフラ)が分かります。
フルスタックエンジニアと名乗ることよりも、あなた自身の専門性や知識の広さが、企業にどう貢献できるかを伝えることが重要です。
フルスタックエンジニアの転職・キャリアパス
フルスタックエンジニアは幅広い領域に対応できるからこそ、キャリアパスも多様に広がります。実際に転職活動へと進む際には、「現在のスキル」だけでなく、「次に習得したいスキル・役割」まで含めて整理をして、目指す方向性を考えてみましょう。
フルスタックを評価する企業の特徴
フルスタックエンジニアを高く評価する企業は、職種や担当領域よりも、プロダクト全体の成果を重視する傾向があります。
自社プロダクトを持つスタートアップや少人数チームなどが当てはまり、こうした企業では「自分の担当外だからやらない」ではなく、「今この課題を解決できる人が動く」という考え方が基本です。
設計から実装、運用までを一体として捉え、役割に縛られず横断的に課題を解決できる人材が高く評価されるでしょう。
転職時に強みとして伝えるポイント
転職活動時にフルスタックエンジニアであることを強みとして伝えるなら、「幅広く対応できます」という抽象的な伝え方はNGです。
軸となる専門領域を伝えつつ、「フロントからDB設計まで一気通貫で担当し、開発工数を30%削減した」など、役割・範囲・成果をセットで説明すると、採用側はあなたが「何を得意としてどこまで任せられる人材か」をイメージしやすくなります。
次のキャリア(テックリード・PM・ITコンサル)
フルスタックエンジニアとしてのスキルを磨き、経験を積んだあとには、キャリアが大きく広がります。開発全体を理解できる強みは、テックリードやPMなど、意思決定や進行管理に携わることも可能です。
また、フルスタックエンジニアとしての経験は技術力だけでなく、ビジネスの視点も持てるようになります。そのため、ITコンサルやプロダクトマネージャーといったポータブルスキルが求められるポジションへのステップアップも十分に可能です。
このようにキャリアパスの可能性を広げていくためには、フルスタックエンジニア時代に1つでも多くのプロジェクトに関わり、チームをリードしたり上流工程に参画したりといった経験を積むことも重要です。
フルスタックエンジニアのキャリア相談ならテックゴーへ
フルスタックエンジニアを目指す際には、「いらないと言われたらどうしよう」「それなら最初から特化型のエンジニアを目指したほうがいいのでは」など、さまざまな迷いが生まれると思います。
とくに近年は職種が細分化され、職種ごとの市場価値や将来性など、自分ひとりで情報を整理することが難しくなっています。
テックゴーでは、IT業界に精通したアドバイザーが、あなたの専門性や志向性を丁寧に整理し、フルスタックエンジニアとしてのキャリア設計や転職のサポートを行います。「フルスタックを目指すべきか迷っている」といった段階でも、気軽な相談からスタート可能です。
さらに、実際の転職活動に進む際には、書類添削や独自の面接対策を何度も提供します。入社後の長期的なキャリアプランの支援にも対応しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
「フルスタックエンジニアはいらない」という声はありますが、実際には決して不要な存在ではありません。幅広い領域への柔軟な対応力や開発全体を俯瞰できる力などは、フルスタックエンジニアならではの強みです。
しかし、ただ「なんでもできるエンジニア」では評価されにくく、市場で評価され続けるためには、専門性を明確にすることが重要です。
あなた自身の志向や強み、企業側の体制も見極めながらキャリアを選択することで、フルスタックエンジニアとしての可能性が広がります。
